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カスハラ 事案記録様式 作り方

カスハラ事案記録様式の作り方|5W1H・対応経過・見直し事項を網羅する書式設計

公開日 2026-09-02・更新日 2026-09-02

# カスハラ事案記録様式の作り方|5W1H・対応経過・見直し事項を網羅する書式設計

カスハラ(顧客等からの著しい迷惑行為)の事案記録様式は、5W1H・対応経過・見直し事項の三層構造で設計することが実務上の出発点になります。

2026年10月1日、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)第33条(改正後)が施行され、全事業主(労働者1人以上)にカスハラ防止措置が義務付けられます。厚生労働省告示第51号(カスハラ防止指針)は、事案の記録・保存を措置の一環として位置づけており、記録様式の整備は義務対応の核心的な作業です。

この記事では、様式に盛り込むべき項目の考え方、各項目の設計上の注意点、運用フローとの接続方法を順に説明します。個別企業の規程作成・添削や就業規則改定の代行は行っておらず、あくまで一般的な情報として参照してください。

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なぜ事案記録様式が必要なのか

指針が求める「記録・保存」の位置づけ

カスハラ防止指針(告示51号)は、事業主が講ずべき措置として相談対応体制の整備とあわせて、事案の記録・保存を求めています。記録がなければ、対応の適切性を事後に検証できず、再発防止策の立案にも支障が生じます。

(参照:厚生労働省告示第51号 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf /2026年9月時点)

記録が果たす三つの機能

事案記録は次の三つの機能を担います。

  • 事実の固定:何が起きたかを時系列で確認できる状態にする
  • 対応の可視化:誰がどのような判断・行動をとったかを追跡できるようにする
  • 組織学習の素材:蓄積した記録から傾向を読み取り、対策を改善する

この三機能を一枚の様式で実現するために、5W1H・対応経過・見直し事項という三層構造が有効です。

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様式の三層構造

第一層:5W1H(事実の固定)

事案の基本情報を記録する層です。以下の項目を設けます。

When(いつ) 発生日時と、相談・報告を受けた日時の両方を記録します。発生から報告までのタイムラグが長い場合、その理由も簡記できる欄を設けると後の検証に役立ちます。

Where(どこで) 店舗・部署・電話・オンラインなど、発生した場所・チャネルを記録します。チャネルによって証拠の種類(録音・チャット履歴・目撃者の有無)が異なるため、後続の対応経過欄と連動させます。

Who(誰が・誰に) 行為者(顧客等)の情報と、被害を受けた労働者の情報を分けて記録します。行為者の氏名・連絡先が不明な場合は「不明」と明記し、特定できた情報だけを記載します。被害者が複数いる場合は全員を記録します。

What(何が) 行為の内容を具体的に記録します。「暴言」「長時間拘束」「SNSへの投稿」など行為の種別と、発言・行動の具体的な内容を分けて記載できる構造にします。感情的な評価語(「ひどい」「理不尽な」)は避け、事実の描写に徹する欄設計にします。

Why(なぜ・背景) 行為者が主張した理由・要求内容を記録します。事業主側の過失の有無とは切り離して、行為者の主張をそのまま記録する欄です。後の対応方針の検討材料になります。

How(どのように) 行為の態様・程度を記録します。継続時間、繰り返しの有無、複数人での来訪・電話など、強度に関わる情報を記載します。

第二層:対応経過(対応の可視化)

事案発生後にとった行動を時系列で記録する層です。

初期対応の記録 誰が(担当者名・役職)、いつ、何をしたかを記録します。「上長に報告」「相談窓口に連絡」「警察・弁護士への相談」など、行動の種別と実施日時を対にして記載できる欄を設けます。

関係者への連絡・共有 被害労働者へのフォロー(メンタルヘルス面の配慮を含む)、関係部署への情報共有、外部機関への相談の有無を記録します。誰に何を伝えたかを明記することで、情報の流れを後から確認できます。

行為者への対応 行為者に対してとった措置(警告・取引停止・法的対応の検討など)を記録します。対応の根拠となった社内規程・マニュアルの名称も併記すると、対応の一貫性を示す材料になります。

証拠の保全 録音データ・映像・メール・チャット履歴・目撃者の証言など、保全した証拠の種別と保管場所を記録します。証拠が存在しない場合も「なし」と明記します。

第三層:見直し事項(組織学習の素材)

個別事案の対応が一段落した後に記入する層です。この層が蓄積されることで、対策の改善サイクルが回ります。

対応上の課題 今回の対応で不十分だった点、判断に迷った点を記録します。「エスカレーションのタイミングが遅れた」「対応マニュアルに該当する記載がなかった」など、具体的な課題を記載します。

再発防止策の案 課題に対して検討した対策案を記録します。この段階では確定した施策でなくても構いません。「マニュアルの該当箇所を追記する」「研修で事例として取り上げる」など、アクションの方向性を記載します。

フォローアップの予定 被害労働者のメンタルヘルスフォローの予定日、再発防止策の実施予定日、次回確認のタイミングを記録します。記録が「書いて終わり」にならないよう、次のアクションを様式内に組み込みます。

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様式設計の実務上の注意点

記入者と承認者を明確にする

様式には「記入者」「記入日」「承認者」「承認日」の欄を設けます。誰が記録したかが不明な様式は、後の検証で信頼性が問われます。承認者欄を設けることで、上長が内容を確認したことも記録に残ります。

個人情報の取り扱いを事前に定める

事案記録には被害労働者・行為者双方の個人情報が含まれます。様式の保管場所・アクセス権限・保存期間を社内規程で定めてから運用を開始します。様式の設計段階で「誰が閲覧できるか」を決めておくことが重要です。

電子・紙の両対応を想定する

様式はWordやExcelなどの電子ファイルで作成し、印刷しても使えるレイアウトにします。現場での初期記録は紙で行い、後から電子ファイルに転記するフローも想定しておくと、記録の漏れを防ぎやすくなります。

様式単体で完結させない

事案記録様式は、相談受付票・対応マニュアル・再発防止策の管理台帳と連動して機能します。様式の末尾に「次のステップ」として関連書類への参照を記載しておくと、担当者が迷わず次の手順に進めます。

カスハラ対応の全体的な規程・マニュアルの構成については カスハラ対応ガイド も参考にしてください。

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様式の運用フロー

記録のタイミング

事案発生後、できる限り早い段階で第一層(5W1H)を記入します。記憶が鮮明なうちに事実を固定することが目的です。対応経過(第二層)は対応の進捗に合わせて随時追記し、見直し事項(第三層)は対応が一段落した後に記入します。

定期的な集計・分析

蓄積した記録を定期的(四半期ごとなど)に集計し、発生チャネル・行為の種別・対応上の課題の傾向を分析します。この分析結果を研修や規程の見直しに反映させることで、対策の実効性が高まります。

様式自体の見直し

様式は一度作成したら固定するのではなく、運用の中で使いにくい点が見つかれば改訂します。記入者からのフィードバックを収集する仕組みを設けておくと、様式の精度が上がります。

様式の雛形を初期整備の出発点として活用したい場合は 書式・雛形ダウンロード をご確認ください。

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法的根拠の確認

カスハラ防止措置の義務は、労働施策総合推進法第33条(改正後)に基づきます。施行日は2026年10月1日であり、企業規模による猶予・経過措置はなく、労働者1人以上の全事業主が対象です。

(参照:e-Gov 労働施策総合推進法 https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132 /2026年9月時点)

措置義務に違反した場合、行政指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得ます(改正後第42条第2項)。なお、過料20万円以下は報告義務違反(虚偽報告・報告拒否)にのみ適用されます。

カスハラ防止指針(告示51号)の内容は以下で確認できます。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf (2026年9月時点)

なお、2026年10月1日の施行と同時に、男女雇用機会均等法第13条(改正後)に基づく求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置も義務化されます。対応する指針は求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止指針(告示52号)です。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662589.pdf (2026年9月時点)

自社の対応状況を整理したい場合は 対応状況チェック も活用できます。

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よくある質問

事案記録様式は社内規程とは別に作成する必要がありますか?

様式と規程は別の文書として整備することが一般的です。規程には「事案を記録・保存する」という義務と手順を定め、様式はその手順を実行するための書式として位置づけます。規程に様式の書式番号や保管場所を明記しておくと、担当者が迷わず運用できます。

記録の保存期間はどのくらいに設定すればよいですか?

カスハラ防止指針(告示51号)は保存期間の具体的な年数を一律に定めていません。労働関係の記録に関する他の法令上の保存期間(労働基準法上の書類等)や、個人情報保護の観点から社内で合理的な期間を定めることが実務上の対応になります。個別の判断については専門家にご相談ください。

行為者が顧客ではなく取引先の担当者だった場合も同じ様式を使えますか?

カスハラ防止指針(告示51号)が対象とする「顧客等」には取引先も含まれます。様式の「行為者」欄に「顧客」「取引先」「その他」などの区分を設けておくと、後の集計・分析で発生元の傾向を把握しやすくなります。

電話での口頭のやり取りだけで証拠が残っていない場合、記録にどう書けばよいですか?

証拠がない場合も「証拠の保全」欄に「録音なし・目撃者なし」と明記します。事実の記録と証拠の有無は別の欄で管理し、証拠がないことを隠さず記録することが重要です。今後の対応として録音体制の整備を検討する場合は、見直し事項欄に記載します。

小規模な事業所でも同じ様式を使う必要がありますか?

労働施策総合推進法第33条(改正後)は労働者1人以上の全事業主を対象としており、企業規模による猶予・経過措置はありません。様式の複雑さは事業規模に応じて調整できますが、5W1H・対応経過・見直し事項の三層構造は規模にかかわらず記録の基本として機能します。 --- 本記事は2026年9月時点の法令・指針に基づく一般情報であり、個別の法的助言・判断ではありません。個別事案への対応や規程の作成・改定については、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。