カスハラ対策 社内監査 確認ポイント
カスハラ対策の社内監査|確認すべき7つのポイント
公開日 2026-08-29・更新日 2026-08-29
# カスハラ対策の社内監査|確認すべき7つのポイント
2026年10月1日、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)第33条の改正が施行されます。これにより、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント、以下「カスハラ」)への対策は、全事業主に課される義務となります。企業規模による猶予や経過措置はなく、労働者が1人以上いるすべての事業主が対象です。
社内監査の場面では、この義務への対応状況が確認項目として挙がるようになっています。本記事では、監査担当者や人事・労務担当者が実際に確認すべき7つのポイントを整理します。なお、本記事は一般情報の提供を目的としており、個別事案の法的判断や規程の作成・添削を行うものではありません。
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カスハラ対策が「義務」である根拠を押さえる
社内監査の前提として、カスハラ対策の法的根拠を正確に理解しておく必要があります。
根拠法令は、労働施策総合推進法第33条(改正後)です。 (参照:e-Gov 労働施策総合推進法 https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132 /2026年8月時点)
具体的な措置内容は、2026年2月26日に告示された厚生労働省告示第51号「カスタマーハラスメント防止指針」(以下「告示51号」)に定められています。 (参照:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf /2026年8月時点)
施行日は2026年10月1日です。この日以降、措置を講じていない事業主は義務違反の状態となります。「望ましい取組」や「努力義務」ではなく、法律上の義務として位置づけられている点を監査担当者は明確に認識してください。
また、報告義務違反(虚偽報告・報告拒否)には20万円以下の過料が適用されます。さらに、勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得ます(改正後第42条第2項)。
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社内監査で確認すべき7つのポイント
ポイント1:カスハラの定義と方針の明文化
告示51号は、カスハラを「顧客等からの著しい迷惑行為であって、労働者の就業環境が害されるもの」と位置づけています。監査では以下を確認します。
- 就業規則または別規程にカスハラの定義が明記されているか
- 「カスハラを許容しない」という事業主の方針が文書化されているか
- その方針が労働者に周知されているか(掲示・イントラネット・配布物等の記録があるか)
方針の明文化は、告示51号が求める措置の出発点です。口頭での周知のみでは、監査上の証跡として不十分と判断されるリスクがあります。
ポイント2:相談窓口の設置と運用実態
カスハラ被害を受けた労働者が相談できる窓口の設置は、告示51号が求める措置の中核です。監査では以下を確認します。
- 相談窓口(担当者または部署)が明確に設定されているか
- 窓口の連絡先が労働者に周知されているか
- 相談を受けた際の対応フロー(受付→記録→対応→フォローアップ)が文書化されているか
- 相談者のプライバシー保護に関する取り決めがあるか
- 相談を理由とした不利益取扱いを禁止する旨が明記されているか
相談窓口が「設置されているが機能していない」状態は、義務の実質的な不履行とみなされる可能性があります。相談受付記録や対応記録の有無も確認対象です。
ポイント3:カスハラ発生時の対応手順の整備
事案が発生した際の対応手順が整備されているかどうかは、監査の重要な確認項目です。
- 被害を受けた労働者への初期対応(事実確認・安全確保)の手順があるか
- 顧客等への対応方針(取引停止・警告・警察への相談等)が定められているか
- 対応の記録・保管ルールが明確か
- 法的対応(弁護士相談・警察への通報)を検討する基準が設けられているか
対応手順が文書化されていない場合、実際に事案が発生したときに対応が属人化し、労働者保護が不十分になるリスクがあります。
ポイント4:研修・教育の実施記録
告示51号は、管理職を含む労働者への研修・教育の実施を求めています。監査では以下を確認します。
- カスハラに関する研修が実施されているか
- 研修の対象者(全労働者か、管理職のみかなど)と実施頻度が定められているか
- 研修の実施記録(日時・参加者・内容)が保管されているか
- 管理職向けに、部下からの相談を受けた際の対応方法が教育されているか
研修記録は、義務履行の証跡として監査上の重要な文書です。実施したとしても記録がなければ、対応の有無を客観的に示すことができません。
ポイント5:業種・業態に応じたリスク評価の実施
カスハラのリスクは業種・業態によって異なります。告示51号は、事業主が自社の状況を踏まえた措置を講じることを求めています。監査では以下を確認します。
- 自社の顧客接点(店舗・電話・訪問等)ごとにカスハラリスクを評価しているか
- リスクの高い業務や部署を特定し、重点的な対策を講じているか
- 取引先・委託先との関係でカスハラが生じる可能性を検討しているか
リスク評価の記録がない場合、措置が形式的なものにとどまっていると判断される可能性があります。
ポイント6:他のハラスメント対策との整合性
カスハラ対策は、既存のパワーハラスメント・セクシュアルハラスメント対策と整合的に運用される必要があります。監査では以下を確認します。
- カスハラに関する規程が、既存のハラスメント防止規程と矛盾していないか
- 相談窓口がカスハラを含む複数のハラスメントを一元的に受け付ける体制になっているか、または別途設けられているか
- 求職者等へのセクシュアルハラスメントへの対応(男女雇用機会均等法第13条・告示52号に基づく義務)との整合性が確保されているか
求職者等へのセクシュアルハラスメントについては、2026年2月26日に告示された「求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止指針」(告示52号)が根拠となります。 (参照:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662589.pdf /2026年8月時点) (参照:e-Gov 男女雇用機会均等法 https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000113 /2026年8月時点)
複数のハラスメント対策が縦割りで管理されていると、対応の漏れや重複が生じやすくなります。
ポイント7:PDCAサイクルの仕組みの有無
一度整備した対策が形骸化しないよう、定期的な見直しの仕組みがあるかどうかも監査の確認対象です。
- カスハラ対策の実施状況を定期的に点検する担当者・部署が定められているか
- 相談件数・対応結果を集計・分析し、対策の改善に活用する仕組みがあるか
- 法令・指針の改正に応じて規程・手順を更新するプロセスが定められているか
PDCAサイクルが機能していない場合、施行当初は対応できていても、時間の経過とともに義務不履行の状態に陥るリスクがあります。
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監査前に整備状況を自己点検する
社内監査の前に、自社のカスハラ対策の整備状況を自己点検しておくことが実務上有効です。カスハラシールドでは、対策の初期整備を始めるための診断ツールを提供しています。
また、規程や対応フローの雛形については、以下のページで確認できます。
カスハラ対策の全体像については、以下のガイドも参照してください。
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監査で指摘されやすい典型的な不備
社内監査の実務では、以下のような不備が指摘されやすい傾向があります。
- 方針は策定されているが、労働者への周知記録がない
- 相談窓口は設置されているが、対応フローが文書化されていない
- 研修を実施したが、参加記録が残っていない
- カスハラ規程はあるが、求職者等へのセクシュアルハラスメントへの対応が別途整備されていない
- リスク評価を行っておらず、業種・業態に応じた対策が講じられていない
これらは、対策の「実施」と「記録・証跡の保管」が分離していることから生じる不備です。義務の履行を客観的に示すためには、実施した措置の記録を適切に保管することが不可欠です。
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よくある質問
社内監査でカスハラ対策を確認する法的根拠はありますか?
カスハラ対策の義務は、労働施策総合推進法第33条(改正後)および告示51号に基づきます。社内監査でこれらへの対応状況を確認することは、法令遵守の観点から実務上重要です。施行日は2026年10月1日です。
小規模な事業者でも社内監査でカスハラ対策を確認する必要がありますか?
はい。カスハラ対策の義務は、労働者が1人以上いるすべての事業主に適用されます。企業規模による猶予や経過措置はありません。
相談窓口の記録はどのように保管すればよいですか?
告示51号は記録の保管方法を具体的に規定していませんが、相談内容・対応経緯・結果を文書化し、プライバシーに配慮した形で保管することが実務上求められます。保管期間や管理方法については、自社の情報管理規程と整合的に定めることが望ましいです。個別の規程設計については、専門家にご相談ください。
カスハラ対策の義務を履行しなかった場合、どのような不利益がありますか?
報告義務違反(虚偽報告・報告拒否)には20万円以下の過料が適用されます。また、勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得ます(改正後第42条第2項)。措置義務違反そのものへの直接的な罰則規定とは区別して理解する必要があります。
求職者等へのセクシュアルハラスメントへの対応も社内監査で確認すべきですか?
はい。求職者等へのセクシュアルハラスメントへの対応は、男女雇用機会均等法第13条(改正後)および「求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止指針」(告示52号)に基づく義務です。施行日はカスハラと同じく2026年10月1日であり、社内監査の確認対象として整合的に位置づけることが実務上有効です。 --- 本記事は2026年8月時点の法令・告示に基づく一般情報であり、個別の法的助言・判断ではありません。個別事案への対応については、専門家にご相談ください。