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カスハラ対策 正当なクレーム 拒否しすぎ

カスハラ対策で正当なクレームを拒否しすぎていないか確認する方法

公開日 2026-08-28・更新日 2026-08-28

# カスハラ対策で正当なクレームを拒否しすぎていないか確認する方法

カスハラ対策を強化するほど、「正当なクレームまで門前払いにしていないか」という不安が生じます。結論から述べると、2026年10月1日に施行された改正労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)第33条および厚生労働省告示第51号(カスハラ防止指針)は、正当なクレームへの対応を免除するものではありません。法が事業主に義務付けているのは「カスタマーハラスメントから労働者を守る措置」であり、「顧客の苦情・要望を一律に遮断すること」ではありません。

この記事では、正当なクレームとカスハラの区別基準、過剰拒否が生じやすい場面、そして両者のバランスを保つための社内体制の整備ポイントを整理します。

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法が定める「カスタマーハラスメント」の定義を確認する

カスハラ防止指針(告示51号)は、カスタマーハラスメントを「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と整理しています。 (参照: https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf / 2026年8月時点)

この定義には二つの要素が含まれています。

  • 要求の内容の妥当性
  • 要求を実現するための手段・態様の社会通念上の相当性

つまり、「要求の内容が妥当であれば、手段・態様が不相当でない限りカスハラには該当しない」という構造です。商品の欠陥を指摘する、サービスの不備を説明するよう求める、返金や交換を要求するといった行為は、内容として妥当な範囲に収まる場合が多く、カスハラとは区別されます。

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正当なクレームとカスハラを区別する実務上の視点

要求の内容を先に評価する

現場でカスハラと正当なクレームを混同しやすい理由の一つは、顧客の態度(声が大きい、繰り返し連絡してくるなど)に先に反応してしまうことです。しかし指針の定義に照らせば、まず「要求の内容が妥当かどうか」を評価することが出発点になります。

内容が妥当であれば、態度が強硬であっても、その要求自体は正当なクレームとして受け付ける必要があります。対応すべきは「要求の内容」であり、「態度の不相当さ」については別途、就業環境を守る観点から対処を検討します。

手段・態様の不相当さを具体的に判断する

手段・態様が「社会通念上不相当」かどうかは、以下のような観点から判断することが考えられます。

  • 長時間にわたる拘束や繰り返しの接触が業務を著しく妨げているか
  • 暴言・侮辱・脅迫的な言動が含まれているか
  • 要求の実現と無関係な個人情報の開示や謝罪行為を強要しているか
  • SNSや口コミサイトへの投稿をちらつかせて不当な要求を通そうとしているか

これらの要素が認められる場合は、内容の妥当性とは切り離して、手段・態様への対処を検討します。

「拒否」ではなく「対応方法の変更」を検討する

正当なクレームに対して「カスハラ対応マニュアルに従い対応を打ち切る」という運用は、法の趣旨に沿いません。指針が求めているのは、不相当な手段・態様から労働者を守ることであり、正当な要求そのものを拒絶することではありません。

実務上は、「この要求には応じる。ただし、この手段・態様では対応できない」という切り分けが有効です。たとえば、電話での長時間拘束には応じないが、書面やメールでの要望受付には応じる、といった対応方法の変更が考えられます。

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過剰拒否が生じやすい場面と原因

マニュアルが「態度」を基準にしている場合

カスハラ対応マニュアルを整備する際、「声を荒げた場合は対応を打ち切る」「同じ内容を複数回連絡してきた場合は受付を停止する」といった態度・行動だけを基準にすると、正当なクレームを持つ顧客を排除するリスクがあります。マニュアルには「要求の内容の妥当性を先に確認する」というステップを明示することが重要です。

現場担当者が判断を避けるようになっている場合

カスハラ対策の研修や周知が「断ることを推奨する」方向に偏ると、現場担当者が判断を避けて一律に対応を拒否するようになることがあります。担当者が「正当なクレームかどうかを判断する権限と手順」を持てるよう、社内体制を整えることが求められます。

相談窓口や上位者への引き継ぎ手順がない場合

現場担当者一人に判断を委ねると、過剰拒否と過剰対応の両方が起きやすくなります。「判断が難しい場合は上位者や相談窓口に引き継ぐ」という手順を明確にすることで、個人の判断ブレを減らすことができます。

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法が事業主に求める措置の範囲

労働施策総合推進法第33条(2026年10月1日施行)および告示51号は、全事業主(労働者1人以上)に対して、カスタマーハラスメントに関する措置を義務付けています。企業規模による猶予や経過措置はありません。 (参照: https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132 / 2026年8月時点) (参照: https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf / 2026年8月時点)

指針が示す措置の内容には、以下が含まれます。

  • 事業主としての方針の明確化と周知・啓発
  • 相談に応じ、適切に対応するための体制の整備
  • 被害を受けた労働者へのケアと再発防止

これらの措置は、「顧客を排除する仕組みを作ること」ではなく、「労働者が不相当な言動にさらされた場合に組織として対処できる体制を整えること」を目的としています。正当なクレームへの対応力を維持しながら、不相当な言動から労働者を守る体制を整えることが、法の趣旨に沿った対応です。

なお、行政から報告を求められた際に虚偽の報告をしたり報告を拒否したりした場合は20万円以下の過料の対象となります。また、勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得ます(改正後第42条第2項)。

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バランスを保つ体制整備のポイント

方針文書に「正当なクレームへの対応継続」を明記する

カスハラに関する社内方針を文書化する際、「正当なクレームには引き続き誠実に対応する」という旨を明記することで、現場担当者が過剰拒否に傾くことを防ぎます。方針文書の雛形については /hinagata で確認できます。

判断フローを二段階にする

現場での対応フローを「①要求の内容を確認する」「②手段・態様を確認する」という二段階にすることで、内容と態様を切り分けた判断が習慣化されます。

定期的な事例の振り返りを行う

対応事例を定期的に振り返り、「正当なクレームを拒否していなかったか」「不相当な言動に対して適切に対処できたか」を確認する機会を設けることが有効です。振り返りの結果は、マニュアルや研修内容の改善に活用します。

相談窓口を内外に設ける

労働者が「この対応でよかったか」を相談できる窓口を設けることで、現場担当者の孤立を防ぎます。外部の相談窓口を活用することも選択肢の一つです。

自社の体制整備の現状を確認したい場合は、カスハラシールド診断 を活用して初期整備を始めることができます。

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体制整備の全体像を把握する

カスハラ対策の体制整備は、方針の策定・周知、相談体制の構築、被害者ケア、再発防止という一連のプロセスで構成されます。各プロセスの詳細については カスハラ対策ガイド で整理しています。

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よくある質問

正当なクレームとカスハラの区別が難しい場合、どうすればよいですか?

告示51号の定義に照らし、まず「要求の内容が妥当かどうか」を確認します。内容が妥当であれば、手段・態様が不相当であっても要求自体は受け付けることを基本とし、手段・態様への対処は別途検討します。判断が難しい場合は上位者や相談窓口に引き継ぐ手順を社内で定めておくことが有効です。

カスハラ対策マニュアルを整備すれば、正当なクレームへの対応を断ってもよいですか?

マニュアルの整備は法が求める措置の一部ですが、正当なクレームへの対応を断ることを正当化するものではありません。マニュアルには「要求の内容の妥当性を先に確認する」というステップを含め、正当なクレームには誠実に対応する旨を明記することが重要です。

施行日はいつですか?

労働施策総合推進法第33条に基づくカスタマーハラスメント対策の主要部分の施行日は2026年10月1日です。全事業主(労働者1人以上)が対象であり、企業規模による猶予はありません。

顧客が繰り返し同じ内容で連絡してくる場合、対応を打ち切ってよいですか?

繰り返しの連絡が業務を著しく妨げている場合は、手段・態様の不相当さとして対処を検討できます。ただし、要求の内容が妥当である場合は、対応方法を変更する(例:電話ではなく書面で受け付けるなど)ことを先に検討することが法の趣旨に沿います。

措置を講じなかった場合、どのような不利益がありますか?

行政から報告を求められた際に虚偽の報告をしたり報告を拒否したりした場合は20万円以下の過料の対象となります。また、勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得ます(改正後第42条第2項)。措置義務そのものへの直接的な罰則規定とは区別されますが、行政指導・勧告の対象となる可能性があります。 --- 免責事項: この記事は2026年8月時点の一般情報であり、個別の法的助言・判断ではありません。個別事案への対応については、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。