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カスハラ対策 相談件数少ない 運用点検

カスハラ相談件数が少ない時の運用点検チェックリスト

公開日 2026-08-23・更新日 2026-08-23

# カスハラ相談件数が少ない時の運用点検チェックリスト

相談件数が少ない状態が続いているとき、それは「カスハラが発生していない」証拠ではなく、「相談しにくい環境になっている」サインである可能性があります。2026年10月1日に施行される労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)第33条に基づくカスハラ防止措置義務は、全事業主に適用される義務です。相談件数の多寡にかかわらず、窓口・記録・周知の三つの観点から運用を定期的に点検することが求められます。

この記事では、相談件数が少ない場合に確認すべき具体的な点検項目を整理します。

なぜ相談件数が少ないと問題なのか

「件数ゼロ」は安心の根拠にならない

カスハラは、顧客・取引先・来訪者など事業主が雇用しない第三者から労働者が受ける著しい迷惑行為です。小売・飲食・医療・介護・コールセンターなど対人業務が多い職場では、日常的に何らかのトラブルが発生しているにもかかわらず、相談件数がゼロまたは極端に少ないケースがあります。

この背景には次のような要因が考えられます。

  • 労働者が「これくらいは我慢すべき」と自己判断して相談しない
  • 相談窓口の存在を知らない、または使い方がわからない
  • 相談しても対応が変わらないという過去の経験から諦めている
  • 上司に報告すると「自分の接客に問題があった」と評価されると恐れている

これらはいずれも、窓口の設置だけでは解消されない運用上の問題です。

義務の内容と施行日

労働施策総合推進法第33条(改正後)は、事業主に対してカスハラ防止のための雇用管理上の措置を義務として課しています。根拠となる指針は厚生労働省告示第51号(カスハラ防止指針)です。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf

施行日は2026年10月1日であり、企業規模による猶予や経過措置はありません。労働者が1人以上いるすべての事業主が対象です。 (e-Gov 労働施策総合推進法 2026年8月時点: https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132)

勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得る(改正後第42条第2項)ため、形骸化した運用を放置することはリスクにつながります。

点検の三つの柱

柱1:相談窓口の設計を点検する

相談件数が少ない場合にまず確認すべきは、窓口そのものの設計です。

窓口の存在が周知されているか

就業規則や社内規程に窓口を定めていても、労働者が実際にその存在を知らなければ機能しません。以下を確認してください。

  • 窓口の名称・連絡先が掲示物・イントラネット・配布資料などで確認できる状態になっているか
  • 入社時の説明や定期研修で窓口の使い方を案内しているか
  • パート・アルバイト・派遣労働者など雇用形態を問わず周知が届いているか

窓口担当者の体制が機能しているか

  • 担当者が長期不在・異動後に引き継ぎが行われていないケースはないか
  • 担当者自身がカスハラの定義や対応手順を理解しているか
  • 担当者が直属の上司である場合、相談しにくい構造になっていないか

匿名・外部窓口の選択肢があるか

カスハラ防止指針(告示51号)は、相談者が不利益を受けないことの担保と、相談しやすい体制の整備を求めています。実名での相談に心理的ハードルがある場合に備え、匿名での受付や外部相談窓口の活用も選択肢として検討できます。

柱2:記録・対応フローを点検する

相談記録が残っているか

口頭で上司に伝えただけで記録が残っていないケースは、運用上の盲点になりやすい箇所です。相談を受けた際に記録するフォーマットや手順が定められているか確認してください。記録がなければ、後から件数を集計することも、対応の適切さを検証することもできません。

「相談」として扱われていない事案がないか

現場では「クレーム対応」「お客様からのご意見」として処理されているものの中に、カスハラに該当する事案が含まれている場合があります。カスハラ防止指針(告示51号)が示す行為類型(身体的・精神的攻撃、土下座の要求、長時間の拘束、SNSへの投稿による脅迫など)と照らし合わせ、既存のクレーム記録を見直すことが有効です。

対応フローが現場に伝わっているか

  • カスハラが発生した際に誰に報告し、誰が対応するかが明確になっているか
  • 現場の労働者が「報告してよい」と認識しているか
  • 管理職が報告を受けた際の初動手順を理解しているか

柱3:周知・研修の実施状況を点検する

カスハラの定義を労働者が理解しているか

「カスハラ」という言葉を知っていても、どのような行為が該当するかを正確に理解していなければ、自分が受けた行為をカスハラと認識できません。研修や資料でカスハラの定義と具体的な行為類型を伝えているかを確認してください。

「我慢しなくてよい」というメッセージが伝わっているか

事業主がカスハラを防止する義務を負っていること、労働者は相談・報告することが推奨されていることを、経営層・管理職から明示的に伝えることが重要です。規程の整備だけでなく、トップメッセージや管理職からの声かけが、相談しやすい雰囲気をつくります。

研修の対象と頻度を確認する

  • 管理職向けと一般従業員向けで内容を分けているか
  • 新入社員・中途採用者への説明が漏れていないか
  • 前回の研修からどれくらいの期間が経過しているか

点検後に確認すべき規程の整備状況

運用の点検と並行して、規程が実態に即した内容になっているかも確認します。

カスハラ防止指針(告示51号)が求める措置の主な要素は次のとおりです。

  • 事業主の方針の明確化と周知・啓発
  • 相談に応じ、適切に対応するための体制の整備
  • カスハラへの事後の迅速かつ適切な対応
  • プライバシーの保護と不利益取扱いの禁止

規程の文面が整っていても、実際の運用がこれらを満たしていなければ義務を果たしているとは言えません。規程と運用の両面を照らし合わせる点検が必要です。

規程の初期整備を始める際の参考として、ひな形・テンプレート一覧もご活用ください。

求職者等へのセクシュアルハラスメントも同時に点検する

2026年10月1日には、カスハラ防止措置義務と同時に、求職者等へのセクシュアルハラスメントに関する措置義務も施行されます。根拠は雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)第13条(改正後)であり、指針は求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止指針(告示第52号)です。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662589.pdf (e-Gov 男女雇用機会均等法 2026年8月時点: https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000113)

求職者等へのセクシュアルハラスメントは、採用選考・インターンシップ・職場見学などの場面で求職者等が受けるセクシュアルハラスメントを対象とします。カスハラ対策の点検と合わせて、採用・選考プロセスにおける相談窓口や対応フローも確認してください。

運用点検を定期的に行う仕組みをつくる

一度点検を行っても、時間の経過とともに担当者の交代や組織変更によって運用が形骸化することがあります。以下のような仕組みを設けることで、継続的な点検が可能になります。

  • 年1回以上、相談件数・対応記録・研修実施状況を確認する定期レビューの設定
  • 点検結果を経営層・人事責任者に報告するルートの確立
  • 点検項目をチェックリスト化し、担当者が変わっても同じ水準で確認できるようにする

自社の対策状況を体系的に確認したい場合は、カスハラ対策診断をご活用ください。現状の整備状況を整理する材料として使えます。

カスハラ対策の全体像についてはカスハラ対策ガイドもあわせてご参照ください。

よくある質問

相談件数がゼロでも義務違反にはならないのでしょうか?

相談件数がゼロであること自体が直ちに義務違反になるわけではありません。ただし、相談件数がゼロの背景に「相談できない環境」がある場合、窓口の設置・周知・対応体制という措置義務の要件を満たしていない可能性があります。件数の多寡ではなく、措置が実際に機能しているかどうかが問われます。

小規模な事業所でも同じ義務が課されますか?

はい。労働施策総合推進法第33条(改正後)に基づくカスハラ防止措置義務は、労働者が1人以上いるすべての事業主に適用されます。企業規模による猶予や経過措置はありません。

相談窓口は社内に設置しなければなりませんか?

カスハラ防止指針(告示51号)は、相談に応じ適切に対応できる体制の整備を求めていますが、窓口を必ず社内に設置することを要件としているわけではありません。外部の相談機関を活用する形も選択肢の一つです。ただし、相談者が実際に利用できる状態になっていることが重要です。

管理職が相談を握りつぶしていた場合、事業主の責任はどうなりますか?

管理職が相談を適切に処理しなかった場合でも、事業主としての措置義務の履行状況が問われます。相談を受けた後の対応フローが整備されているか、管理職が適切な対応を取れるよう研修・指導が行われているかが重要な確認点です。個別事案の法的判断については、社会保険労務士や弁護士にご相談ください。

点検の結果、規程を改定する必要が生じた場合はどうすればよいですか?

規程の改定が必要と判断した場合は、カスハラ防止指針(告示51号)の内容を参照しながら初期整備を始めることが出発点になります。就業規則の変更を伴う場合は労働基準法上の手続きが必要です。具体的な規程の作成・改定については、社会保険労務士や弁護士にご相談ください。 --- 本記事は2026年8月時点の法令・指針に基づく一般情報であり、個別の法的助言・判断ではありません。具体的な対応については、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。