カスハラ規程 実態 乖離 点検
カスハラ規程と現場の乖離を点検する方法【2026年10月施行対応】
公開日 2026-08-27・更新日 2026-08-27
# カスハラ規程と現場の乖離を点検する方法【2026年10月施行対応】
カスハラ規程を整備しても、現場の運用実態と内容がずれていれば、法が求める「措置」を講じたとは言えません。2026年10月1日に施行される改正労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)第33条に基づく義務への対応として、まず規程と実態の乖離を点検することが出発点になります。
この記事では、規程の形骸化を見抜くための点検視点と、点検後の整備に向けた考え方を整理します。個別の規程作成・添削や就業規則改定の代行は行いませんが、自社での確認材料としてご活用ください。
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なぜ「規程と実態の乖離」が問題になるのか
規程があるだけでは義務を果たしたことにならない
労働施策総合推進法第33条(改正後)は、事業主に対してカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)に関する措置を義務として課しています。この義務の内容は、厚生労働省告示第51号(カスハラ防止指針)に具体的に示されています。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf(2026年8月時点)
指針が求める措置は、規程の「制定」にとどまりません。相談体制の整備、従業員への周知・啓発、被害発生時の対応手順の確立など、実際に機能する仕組みを構築することが求められています。規程の文書が存在しても、現場の担当者がその内容を知らない、相談窓口が実質的に機能していない、対応手順が実際の事案に使われていないといった状態では、措置を講じているとは評価されません。
乖離が生じやすい典型的なパターン
規程と実態の乖離は、次のような場面で生じやすい傾向があります。
- 規程の制定時に現場の業務フローを反映せず、実際の対応と手順が一致していない
- 相談窓口の担当者が変わったにもかかわらず、規程の記載が更新されていない
- 研修を実施したが、内容が規程の手順と異なる説明になっている
- 事案が発生した際に、規程に定めた手順ではなく慣習的な対応が行われている
- 規程上は「記録を残す」と定めているが、実際には記録が作成されていない
これらは、規程の制定後に点検の機会を設けていない事業主に多く見られる状況です。
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点検の前提:対象となる事業主の範囲
労働施策総合推進法第33条に基づくカスハラ対策の義務は、労働者を1人以上雇用するすべての事業主が対象です。企業規模による猶予や経過措置はありません。施行日は2026年10月1日です。 https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132(2026年8月時点)
規模が小さいから対応を後回しにできるという判断は、法的根拠がありません。点検の対象は、規模を問わずすべての事業主です。
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規程と実態の乖離を点検する視点
点検は、規程の「文書」と「現場の動き」を照合する作業です。以下の視点を順に確認することで、乖離の所在を特定しやすくなります。
視点1:定義と認識の一致
規程に定めたカスハラの定義を、現場の従業員が正確に理解しているかを確認します。
確認のポイントは次のとおりです。
- 規程に記載されたカスハラの定義と、従業員が「カスハラだと思う行為」の認識が一致しているか
- 「これはカスハラに当たるのか」と迷ったときに、従業員が規程を参照する習慣があるか
- 管理職と一般従業員の間で、カスハラの認識に大きなばらつきがないか
定義の認識がずれていると、被害を受けた従業員が「これはカスハラではないかもしれない」と判断して相談しない事態が生じます。
視点2:相談窓口の実効性
規程に相談窓口を定めていても、従業員がその窓口を実際に利用できる状態にあるかを確認します。
- 相談窓口の担当者名・連絡先が最新の状態に保たれているか
- 従業員が相談窓口の存在を知っているか(周知の方法と頻度を確認する)
- 相談を受けた担当者が、規程に定めた手順に従って対応できるか
- 相談者のプライバシーが保護される仕組みが実際に機能しているか
相談窓口が「名目上は存在するが、誰も使い方を知らない」状態は、措置として機能していません。
視点3:対応手順の現場への浸透
カスハラ事案が発生した際の対応手順が、規程どおりに実施されているかを確認します。
- 過去に発生した事案(または訓練・ロールプレイ)で、規程の手順が実際に使われたか
- 対応の記録が規程の定めに従って作成・保管されているか
- 事案対応後に、規程の手順の改善点を検討する機会が設けられているか
手順が紙の上にしか存在しない場合、実際の事案で担当者が判断に迷い、対応が遅れるリスクがあります。
視点4:研修内容と規程の整合性
従業員向けに実施した研修の内容が、規程の内容と整合しているかを確認します。
- 研修で説明したカスハラの定義・事例が、規程の記載と一致しているか
- 研修で案内した相談窓口・対応手順が、規程の最新版と一致しているか
- 研修の実施記録が残っており、未受講者の把握と対応ができているか
規程を改定した後に研修内容を更新していない場合、従業員が古い情報に基づいて行動するリスクがあります。
視点5:規程の更新サイクル
規程が制定後に一度も見直されていない場合、組織の変化や法令・指針の改定に対応できていない可能性があります。
- 相談窓口の担当者変更、組織改編、業務フローの変更が規程に反映されているか
- カスハラ防止指針(告示51号)の内容と規程の記載が整合しているか
- 規程の見直し時期・手順が定められており、実際に機能しているか
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点検の進め方:実務的なステップ
ステップ1:規程の現状把握
まず、現在の規程の最新版を確認します。複数の文書が存在する場合(就業規則の附則、別規程、マニュアルなど)、それぞれの内容が矛盾していないかを確認します。
ステップ2:現場へのヒアリング
管理職・一般従業員・相談窓口担当者それぞれに対して、規程の認知状況と実際の対応経験を確認します。ヒアリングは、規程の内容を前提とした質問形式にすると、認識のずれを把握しやすくなります。
ヒアリングの例として、次のような質問が考えられます。
- 「カスハラが発生した場合、最初に誰に連絡しますか」
- 「相談窓口の担当者の名前と連絡先を教えてください」
- 「相談を受けた場合、どのような記録を残しますか」
ステップ3:記録・文書の照合
過去の相談記録・対応記録が存在する場合、規程に定めた手順どおりに作成・保管されているかを照合します。記録が存在しない場合は、その理由(事案がなかったのか、記録が作成されなかったのか)を確認します。
ステップ4:乖離箇所の整理と優先順位付け
点検で把握した乖離を一覧化し、対応の優先順位を検討します。相談窓口の機能不全や対応手順の未浸透は、実際の被害発生時に直接影響するため、優先度が高い項目として整理することが一般的です。
点検結果の整理や初期整備の方向性を検討する際は、カスハラシールドの診断ツールを確認材料としてご活用いただけます。
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点検後の整備に向けた考え方
規程の改定と現場への反映を同時に進める
乖離が見つかった場合、規程の文書を修正するだけでなく、現場への周知・研修の更新・記録様式の整備を同時に進めることが重要です。規程だけを改定して現場への反映を後回しにすると、再び乖離が生じます。
規程の雛形や整備の参考情報については、カスハラシールドのガイドおよび規程雛形ページをご参照ください。
定期的な点検サイクルを設ける
一度点検を行っても、組織の変化や法令・指針の改定によって再び乖離が生じる可能性があります。年1回程度の定期点検を規程に明記し、実施記録を残すことで、継続的な管理が可能になります。
勧告・企業名公表のリスクを踏まえた対応
労働施策総合推進法の改正後、行政による報告徴収・助言・指導・勧告の対象となり得ます。勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得る(改正後第42条第2項)ことも踏まえ、規程と実態の整合性を維持することが重要です。
なお、報告義務に対する虚偽報告や報告拒否については、過料20万円以下の規定があります。これは措置義務違反そのものへの罰則ではなく、報告義務違反に適用されるものです。
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よくある質問
規程を制定済みであれば、点検は不要ですか?
規程の制定は措置の一部にすぎません。労働施策総合推進法第33条(改正後)および告示51号(カスハラ防止指針)が求める措置は、相談体制の整備・周知・対応手順の確立など複数の要素を含みます。規程が存在しても、現場で機能していなければ義務を果たしているとは言えないため、定期的な点検が必要です。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf(2026年8月時点)
小規模な事業主でも点検は必要ですか?
はい、必要です。労働施策総合推進法第33条に基づくカスハラ対策の義務は、労働者を1人以上雇用するすべての事業主が対象であり、企業規模による猶予や経過措置はありません。施行日は2026年10月1日です。 https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132(2026年8月時点)
点検はどの部署が担当すべきですか?
法令上、特定の部署を指定する規定はありません。人事・労務部門が中心となるケースが多いですが、現場の実態を把握するためには、各部門の管理職や相談窓口担当者を巻き込んだ形で進めることが実務上有効です。担当部署の設定は各事業主の判断によります。
点検の結果、規程の改定が必要になった場合、どう進めればよいですか?
規程の改定は、就業規則の変更手続きを含む場合があります。個別の規程作成・添削や就業規則改定の代行は本サービスの対象外ですが、整備の方向性を検討する際の参考情報としてカスハラシールドのガイドをご活用いただけます。具体的な手続きについては、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
カスハラ対策と合わせて、求職者等へのセクシュアルハラスメント対策も点検すべきですか?
求職者等へのセクシュアルハラスメントについても、男女雇用機会均等法第13条(改正後)および厚生労働省告示第52号(求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止指針)に基づく義務が、同じく2026年10月1日から施行されます。採用活動に関わる事業主は、カスハラ対策と並行して点検・整備を進めることが求められます。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662589.pdf(2026年8月時点) https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000113(2026年8月時点) --- 本記事は2026年8月時点の法令・指針に基づく一般情報であり、個別の法的助言・判断ではありません。個別事案への対応については、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。