カスハラ対応規程 作り方
カスハラ対応規程の作り方|手順・必要条項・社内導入の流れ
公開日 2026-07-21・更新日 2026-07-27
カスハラ対応規程を作るには、「目的と定義の明確化」「対応手順の文書化」「就業規則との整合確認」「社内周知と運用開始」という4段階を順番に進めることが出発点になります。2026年10月1日から、事業主にはカスタマーハラスメント防止の措置義務が課されるため、規程の整備はこの施行日を見据えて進めます。
規程が必要になる背景
2026年10月1日から、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第33条に基づき、事業主にはカスタマーハラスメント防止の措置義務が課されます。対象は労働者を1人でも雇用する全事業主で、企業規模による猶予はありません。
措置義務の内容は、厚生労働省告示第51号(2026年7月時点)が具体的に示しており、事業主の方針の明確化及び周知・啓発、相談体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応、相談者のプライバシー保護と不利益取扱いの禁止という4つの措置を求めています。この4点を実施するための土台として、規程を文書化しておくことが実務上の起点になります。
規程を作成しただけでは初期整備を始めた段階であり、周知・相談窓口の運用・記録の保管まで含めて体制を整えることが求められます。個別企業の規程作成・添削や就業規則改定の代行は本記事の範囲外です。
規程を作る前に確認すること
既存の社内規程との関係を整理する
カスハラ対応規程は、就業規則・ハラスメント防止規程・クレーム対応マニュアルと重複する部分が生じやすい文書です。新たに単独規程を設ける場合でも、就業規則の付属規程として位置付ける場合でも、既存文書との矛盾が生じないよう事前に一覧化しておくことが重要です。
就業規則の変更を伴う場合は、労働基準法第89条・第90条に基づく届出・意見聴取の手続きが必要になることがあります。この点は社会保険労務士や弁護士など専門家に確認することをお勧めします。
対象となる行為の範囲を把握する
厚生労働省告示第51号は、職場におけるカスタマーハラスメントを、顧客等の言動であって、業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されることと整理しています。正当な苦情や指摘は含まれません。
規程を作る際は、この整理を参照しながら自社業種・業態に即した具体例を列挙しておくと、現場での判断基準が明確になります。
規程に盛り込む主な条項
以下は一般的に検討される条項の例示です。自社の状況に合わせて取捨選択してください。
総則(目的・定義)
規程の冒頭には、何のために定めるのかという目的と、「カスタマーハラスメント」「顧客等」「労働者」といった用語の定義を置きます。定義が曖昧だと、現場が「これはカスハラに該当するか」を判断できず、規程が機能しません。
会社の基本方針
会社として従業員を守るという姿勢を明文化する条項です。方針の明確化と周知・啓発は、指針が求める措置の1つ目に当たります。
従業員の義務と行動基準
従業員が取るべき初期対応(記録・報告・エスカレーション)を定めます。一人で抱え込まず、速やかに上長または相談窓口に報告する原則を明記することで、現場の孤立を防ぐ仕組みを作ります。
会社の対応手順
行為の深刻度に応じた対応フローを定めます。一般的には、初期対応(記録・報告)、組織対応(複数名での対応・担当者の交代)、外部連携(警察・弁護士・行政機関への相談)、取引・サービス提供の停止の検討という段階が考えられます。どの段階で誰が判断するかを明確にしておくことが、現場の混乱を防ぐうえで重要です。
相談・報告窓口
従業員が相談できる窓口を定めます。窓口担当者の守秘義務、相談者への不利益取扱いの禁止も明記します。この窓口整備と不利益取扱いの禁止は、指針が求める措置の中核です。
記録の保存
対応経緯の記録・保存ルールを定めます。保存期間と管理方法を明示しておくと、後日の対応に備えやすくなります。
規程を作る手順
ステップ1 現状把握と課題整理
自社でこれまでに発生したカスハラ事案の記録を収集し、どのような行為が多いか、現場がどのような対応に困っているかを把握します。管理職へのヒアリング、従業員アンケート、過去のクレーム記録の分析などが現状把握の方法として考えられます。
ステップ2 規程の草案作成
現状把握をもとに、前述の条項を参考にしながら草案を作成します。当サイトでは、規程の初期整備を始める際に参考にできるひな形・テンプレートを提供しています。参考資料として活用し、自社の実情に合わせて修正してください。
ステップ3 関係部署・専門家との確認
草案ができたら、人事・法務・コンプライアンス担当者、および必要に応じて社会保険労務士・弁護士と内容を確認します。就業規則との整合性、労働基準法上の手続き要否を点検します。
ステップ4 就業規則への反映・届出の要否確認
カスハラ対応規程を就業規則の付属規程として位置付ける場合、または就業規則本体を改定する場合は、労働基準法に基づく手続きが必要になることがあります。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、所轄労働基準監督署への届出が求められる場合があります。自社が対象かどうかは事業場ごとに確認します。
ステップ5 社内周知と教育
規程を制定したら、全従業員に周知します。社内イントラへの掲載、全体会議での説明、書面配布などが一般的な方法です。カスハラ対応の基礎知識については、カスハラ対策完全ガイドも参考にしてください。
ステップ6 運用・見直し
規程は作成して終わりではなく、実際の運用を通じて定期的に見直します。新たな事案が発生した際の対応記録を蓄積し、年1回程度の規程レビューを行う仕組みを設けることをお勧めします。自社の対応状況を確認したい場合は、1分の無料カスハラ対策診断も活用できます。
中小企業が規程整備を進める際の留意点
中小企業では、専任の人事・法務担当者がいない場合も多く、規程整備のリソースが限られることがあります。その場合でも、最低限「会社の基本方針」「相談窓口」「対応フロー」の3点を文書化しておくことが、初期整備を始める第一歩になります。措置義務は企業規模による猶予がないため、2026年10月1日までに着手することが求められます。
よくある質問
カスハラ対応規程は法律で義務付けられていますか
2026年10月1日から、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第33条に基づき、事業主にはカスタマーハラスメント防止の措置義務が課されます。規程そのものの様式が法定されているわけではありませんが、方針の明確化・周知や相談体制の整備といった措置義務を果たすための土台として、文書化が実務上の起点になります。
就業規則とは別に単独規程を作る必要がありますか
必ずしも単独規程である必要はありません。既存のハラスメント防止規程にカスハラに関する条項を追加する方法や、就業規則の付属規程として整備する方法など、自社の規程体系に合わせた形式を選択できます。いずれの場合も、就業規則との整合性を確認することが重要です。
規程に「取引・サービス提供の停止」を盛り込んでも問題ありませんか
悪質な行為に対してサービス提供を停止する旨を規程に定めることは、事業主の対応方針として考えられる選択肢の一つです。具体的な条件・手続き・業種特有の規制との関係については、弁護士等の専門家に確認することをお勧めします。
規程を作った後、従業員への周知はどのように行えばよいですか
社内イントラへの掲載、全体会議・朝礼での説明、書面配布、入社時研修への組み込みなどが一般的な方法です。周知の記録を保存しておくと、後日の確認に役立ちます。
規程はどのくらいの頻度で見直すべきですか
法令改正・行政指針の更新・社内での新たな事案発生などを契機に見直すことが基本です。定期的な見直しとしては、年1回程度のレビューを設けている企業が多いようです。 本記事は一般情報であり、個別の法的助言・判断ではありません。規程の作成・改定にあたっては、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。(2026年7月時点の一次資料に基づきます)