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カスハラ 基本方針 書き方 掲示例

カスハラ基本方針の書き方と掲示例|構成と社内外への周知方法

公開日 2026-07-23・更新日 2026-07-27

カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の基本方針は、「何を盛り込むか」「どこに掲示するか」の2点を押さえることで、初期整備を始めることができます。2026年10月1日の措置義務化を見据え、本記事では基本方針に必要な構成要素、文例のポイント、社内外への掲示・周知方法を順に説明します。

なお、本記事は一般的な情報の整理を目的としており、個別企業の規程作成・添削や法的判断の提供を行うものではありません。

カスハラ基本方針が必要な背景

2025年6月11日に公布された改正法(令和7年法律第63号)により、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第33条に基づき、事業主にはカスタマーハラスメント対策の実施が義務付けられます。施行日は2026年10月1日で、対象は労働者を1人でも雇用する全事業主です。企業規模による猶予はありません(2026年7月時点)。

  • e-Gov 労働施策総合推進法: https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132

厚生労働省が定める指針(厚生労働省告示第51号)は、事業主が講ずべき措置の内容を具体的に示しており、その筆頭に「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」が挙げられています。

  • 厚生労働省告示第51号: https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf

基本方針を文書化して社内外に示すことは、2026年10月1日の措置義務化に向けた対応の出発点であるとともに、従業員への安心感の提供や顧客・取引先への姿勢表明としても機能します。

基本方針に盛り込む構成要素

基本方針の文書に含めるべき内容は、大きく次の5つに整理できます。

1. カスタマーハラスメントの定義

「カスタマーハラスメント」という言葉の意味を自社の文書内で明示します。厚生労働省告示第51号では、顧客等の言動であって、業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されることと整理されています。正当な苦情や指摘は含まれません。自社の業種・業態に照らして、具体的な行為類型を列挙すると従業員が判断しやすくなります。

2. 会社としての基本姿勢

「従業員の就業環境を守る」「不当な要求には応じない」といった会社の立場を明文化します。この部分が方針の核心であり、経営者または代表者の名義で示すことで、組織全体のコミットメントを内外に伝えることができます。

3. 対応手順の概要

カスハラが発生した場合の初動対応(上長への報告、複数対応への切り替え、記録の保存など)の概要を記載します。詳細な手順は別途マニュアルに委ねる形でも構いませんが、方針文書に「対応手順を定める」旨を明記しておくと、マニュアルとの連動が明確になります。

4. 相談・報告窓口

従業員がカスハラ被害を申告できる窓口(担当部署・担当者・連絡先)を記載します。窓口が機能していることを示すことで、被害の潜在化を防ぐ効果が期待できます。

5. 不利益取扱いの禁止

カスハラを申告した従業員や対応に関わった従業員に対して、会社が不利益な取扱いをしない旨を明記します。この一文があることで、従業員が安心して申告できる環境の整備につながります。

書き方のポイントと文例

簡潔な文体を選ぶ

基本方針は、従業員だけでなく顧客や取引先の目に触れる場合もあります。専門用語を多用せず、平易な文体で書くことが望ましいです。

文例(冒頭部分のイメージ)

以下は構成のイメージを示す参考例です。実際の規程作成は、自社の業種・規模・既存規程との整合性を確認しながら進めてください。

当社は、従業員が安心して働ける職場環境を維持するため、顧客・取引先等からのカスタマーハラスメントに対して毅然とした姿勢で対応します。カスタマーハラスメントとは、顧客・取引先等からの要求の内容や手段が社会通念上相当な範囲を超え、従業員の就業環境を害するものをいいます(具体例: 暴言・脅迫・長時間の拘束・不当な謝罪要求等)。当社は従業員の安全と尊厳を守ることを最優先とし、不当な要求には応じません。相談窓口は人事部(内線○○○○)です。

実際の文書では、上記に「対応手順の概要」「不利益取扱いの禁止」「制定日・改定日・代表者名」を加えて完成させます。雛形の全体像や記載項目の詳細については、ひな形・テンプレートで確認できます。

就業規則との関係

基本方針は単独の文書として作成することも、就業規則の附則・別規程として組み込むことも可能です。どちらの形式を選ぶかは、既存の規程体系や労働基準監督署への届出の要否を踏まえて検討します。就業規則に組み込む場合は、常時10人以上の労働者を使用する事業場では届出義務が生じることがある点に留意が必要です。

社内への掲示・周知方法

掲示場所の選定

社内への周知は、従業員が日常的に目にできる場所への掲示が基本です。休憩室・更衣室などの共用スペースへの掲示、社内イントラネット・グループウェアへの掲載、入社時の研修資料への組み込み、定期的なメール配信や朝礼での読み合わせなどが考えられます。掲示するだけでなく、内容を理解してもらうための説明の機会を設けることが、実効性を高めるうえで重要です。

研修・教育との連動

基本方針を制定した後は、管理職向けの対応研修や全従業員向けの周知研修と組み合わせることで、方針が形骸化するリスクを下げることができます。研修の内容や頻度については、カスハラ対策完全ガイドも参考にしてください。

社外(顧客・取引先)への掲示方法

店頭・受付への掲示

小売・飲食・医療・金融など、顧客と直接接する業種では、店頭や受付カウンターへの掲示が有効です。「当店ではカスタマーハラスメントに対して毅然と対応します」といった簡潔な文言を、ポスター形式で掲示する事業者が増えています。

ウェブサイトへの掲載

コーポレートサイトや問い合わせページに基本方針を掲載することで、顧客・取引先に対して事前に姿勢を示すことができます。問い合わせフォームの近くに掲載すると、閲覧される機会が増えます。

契約書・利用規約への記載

BtoB取引の場合は、契約書や取引基本約款にカスハラ対応に関する条項を盛り込む方法もあります。この場合は、法務担当者や弁護士との確認を経て進めることが望ましいです。

掲示後の運用と見直し

基本方針は制定して終わりではなく、定期的な見直しが必要です。法令の改正、社内でのカスハラ事案の発生状況、従業員からのフィードバックなどを踏まえて、少なくとも年1回は内容を確認することを検討してください。自社の対策状況を体系的に確認したい場合は、1分の無料カスハラ対策診断を活用することで、現状の整備状況を把握する材料にすることができます。

勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得るという点も念頭に置きながら、2026年10月1日の施行に向けて継続的な対策の整備を進めることが重要です。

よくある質問

基本方針は就業規則とは別に作る必要がありますか

法令上、就業規則への組み込みが必須とされているわけではありません。単独の文書として作成することも、就業規則の別規程として整備することも可能です。ただし、就業規則に組み込む場合は届出義務の有無を確認する必要があります。

小規模な事業者でも基本方針の作成は必要ですか

労働施策総合推進法に基づく措置義務は、事業規模による適用除外が設けられていません(2026年7月時点)。従業員数が少ない事業者であっても、2026年10月1日の施行に向けて基本方針の整備を検討することが求められます。

基本方針に代表者の署名は必要ですか

法令上、署名の形式は定められていません。ただし、代表者または経営幹部の名義で示すことで、組織全体のコミットメントを内外に伝えやすくなります。形式よりも、内容が従業員に伝わることを優先して検討してください。

顧客向けの掲示文と社内向けの方針文書は別々に作るべきですか

目的が異なるため、別々に作成することが一般的です。社内向けは対応手順・窓口・不利益取扱いの禁止など従業員が必要とする情報を詳細に記載し、顧客向けは会社の姿勢を簡潔に伝える内容にまとめると、それぞれの読み手に伝わりやすくなります。

基本方針を作成した後、どのくらいの頻度で見直すべきですか

法令上、見直し頻度の規定はありません。一般的には、法令改正があった場合や社内でカスハラ事案が発生した場合に加え、定期的な確認として年1回程度の見直しを検討することが望ましいとされています。 本記事は2026年7月時点の法令・指針に基づく一般情報であり、個別の法的助言・判断ではありません。個別の規程作成・就業規則改定・法的判断については、社会保険労務士または弁護士にご相談ください。