介護施設 カスハラ 規程 ひな形
介護施設のカスハラ規程ひな形|利用者家族・訪問・夜間対応の盛り込み方
公開日 2026-09-03・更新日 2026-09-03
# 介護施設のカスハラ規程ひな形|利用者家族・訪問・夜間対応の盛り込み方
介護施設がカスタマーハラスメント(カスハラ)防止規程を整備するうえで最初に押さえるべきことは、2026年10月1日から措置義務が施行されるという事実です。根拠は労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)第33条(改正後)であり、企業規模による猶予・経過措置はなく、労働者が1人以上いるすべての事業主が対象です。
この記事では、介護施設に特有の「利用者家族からのクレーム」「訪問介護中の対応」「夜間・深夜帯の対応」という三つの場面を規程にどう反映するかを中心に、規程の骨格と各条項の考え方を整理します。規程のひな形そのものは カスハラシールドのひな形ページ(/hinagata) からダウンロードして初期整備の材料にしてください。
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なぜ介護施設は規程整備を急ぐ必要があるのか
法的根拠と義務の性格
労働施策総合推進法第33条(改正後)は、事業主に対してカスハラ防止のための雇用管理上の措置を義務として課しています。厚生労働省告示第51号(カスハラ防止指針)は、その措置の具体的な内容を定めています。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf (2026年9月時点)
e-Gov 労働施策総合推進法: https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132 (2026年9月時点)
措置義務を履行しない場合、行政指導・勧告の対象となります。勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得る(改正後第42条第2項)ため、施行前に規程の初期整備を始めることが重要です。なお、過料20万円以下は報告義務違反(虚偽報告・報告拒否)にのみ適用されます。
介護現場が直面しやすいリスク
介護施設では、サービスの受け手が利用者本人だけでなく、その家族・後見人など多様な関係者に広がります。また、訪問介護では職員が利用者宅という「密室」に単独で入るケースがあり、夜間帯は管理職が不在になりやすい構造があります。これらの特性が、カスハラ被害を見えにくくし、職員が一人で抱え込む状況を生みやすくします。規程は「何がカスハラか」「どう報告するか」「施設はどう対応するか」を明文化することで、こうした構造的リスクを組織として管理する基盤になります。
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規程の骨格:介護施設向けに必要な条項
第1章 目的・定義
規程の冒頭には、労働施策総合推進法第33条(改正後)および告示第51号に基づく措置であることを明記します。定義条項では「カスタマーハラスメント」を告示第51号の表現に沿って記載します。告示第51号は、カスハラを「顧客等からの著しい迷惑行為」と整理しており、「業務の適正な範囲を超えるもの」という要件が重要です。
介護施設の場合、「顧客等」には利用者本人のほか、利用者の家族・後見人・代理人、訪問先の同居家族なども含まれることを定義条項に明示しておくと、現場での判断がしやすくなります。
第2章 禁止行為の類型
告示第51号は、カスハラの行為類型として身体的攻撃、精神的攻撃、土下座の要求、長時間の拘束、SNS・口コミへの投稿による脅迫などを例示しています。介護施設の規程では、これらに加えて以下の類型を明記することを検討してください。
- 深夜・早朝の繰り返し電話
- 訪問介護中における職員への身体的接触・性的言動
- 施設内での録音・録画による威圧
- 他の利用者・職員の前での大声による侮辱
「業務の適正な範囲を超えるか否か」の判断基準も条項内または別表として示しておくと、現場リーダーが初動対応を判断しやすくなります。
第3章 相談・報告体制
相談窓口の設置は告示第51号が求める措置の中核です。介護施設では以下の点を規程に盛り込みます。
相談窓口の明示 施設内の担当者(例:施設長・主任・人事担当)と、外部相談窓口(社会保険労務士事務所、EAP機関など)の両方を記載します。
報告ルートの複線化 訪問介護職員や夜間専従職員は直属の上司に報告しにくい状況が生じやすいため、「直属上司を経由しない報告ルート」を規程上で認めます。具体的には「施設長または本部担当者への直接報告を妨げない」旨を明記します。
記録の義務化 カスハラ事案が発生した場合、職員が「発生日時・場所・行為の内容・対応経緯」を所定の様式に記録し提出することを義務として定めます。記録は事後の対応方針決定や行政対応の根拠になります。
第4章 事業主の対応方針
告示第51号は、事業主がカスハラに対して組織として対応する方針を明確にすることを求めています。規程には以下を盛り込みます。
- 職員を守ることを最優先とする旨の宣言
- 悪質な行為者に対してサービス提供を制限・拒否できる旨
- 警察・弁護士等への相談・通報を妨げない旨
- 職員が相談・報告したことを理由に不利益取扱いをしない旨(不利益取扱い禁止)
サービス提供の制限・拒否については、介護保険法上の正当な理由に該当するかどうかの判断が別途必要になる場面があります。規程には「法令上の義務と照合のうえ判断する」という留保を入れておくことが実務上の安全策です。
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介護施設特有の三場面への対応
利用者家族からのクレーム対応
利用者家族からのクレームは、正当な苦情とカスハラの境界が曖昧になりやすい場面です。規程では「正当な苦情・要望への対応と、業務の適正な範囲を超える言動への対応は区別する」と明記します。
具体的には、「繰り返しの長時間電話」「深夜帯の電話」「担当職員への個人的な連絡」「SNSでの誹謗中傷」などを規程上の例示として列挙します。また、家族対応の窓口を施設長または相談員に一本化し、担当職員が個人で抱え込まない体制を規程上で担保します。
訪問介護中の対応
訪問介護は、職員が利用者宅に単独で入るという構造上、被害が発生しても第三者が確認しにくい環境です。規程には以下を盛り込みます。
- 訪問前後の安全確認連絡(チェックイン・チェックアウト)の義務化
- 訪問中に危険を感じた場合の即時退出・報告を認める旨
- 同居家族からの性的言動・身体的接触を禁止行為として明示
- 繰り返し被害が確認された利用者宅への対応方針(複数対応・訪問中止の検討)
訪問介護職員は非正規・パートタイムの割合が高い場合もありますが、雇用形態にかかわらず規程の保護対象であることを条文上で明確にします。
夜間・深夜帯の対応
夜間帯は管理職が不在になりやすく、職員が判断を一人で迫られる状況が生じます。規程には以下を盛り込みます。
- 夜間帯の緊急連絡先(管理職・オンコール担当)の明示
- 夜間帯に発生したカスハラ事案の翌朝報告義務と様式
- 夜間帯における録音・記録の許可(証拠保全の観点)
- 深夜の繰り返し電話を禁止行為として明示し、対応時間帯を規程上で設定する旨
夜間帯の対応ルールは、規程本体に加えて「夜間対応マニュアル」として別途整備し、規程から参照する形にすると現場での運用がしやすくなります。
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規程整備の手順
ステップ1:現状把握
まず、過去に発生したカスハラ事案(ヒヤリハット含む)を収集・整理します。施設内でどの場面・どの行為類型が多いかを把握することで、規程の優先事項が明確になります。現状把握の方法については カスハラシールドのガイドページ(/guide) も参考にしてください。
ステップ2:ひな形の活用と施設への適合
汎用的なひな形をそのまま使うのではなく、施設の規模・サービス種別(通所・入所・訪問)・夜間体制に合わせて条項を調整します。ひな形ページ(/hinagata) では介護施設向けの記載例も確認できます。
ステップ3:就業規則との整合確認
カスハラ防止規程は就業規則の附属規程として位置づけるか、就業規則本体に条項を追加するかを検討します。いずれの場合も、既存の服務規律・懲戒規定との整合を確認します。就業規則の変更には労働者代表への意見聴取と労働基準監督署への届出が必要です(労働基準法第89条・第90条)。
ステップ4:周知・研修
規程を整備しても職員に周知されなければ機能しません。告示第51号は、事業主が方針を労働者に周知することを措置の一つとして求めています。入職時研修・年1回以上の定期研修への組み込みを規程上で定めます。
ステップ5:定期的な見直し
規程は整備して終わりではなく、事案の発生状況・法令の改正・指針の更新に応じて見直します。見直しの頻度(例:年1回)と担当者を規程上で定めておきます。
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自社の対応状況を確認したい場合
規程整備の前に自社の現状を確認したい場合は、カスハラシールドの診断ページ(/shindan) で簡易チェックができます。
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参考一次資料
- 厚生労働省告示第51号(カスハラ防止指針):https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf (2026年9月時点)
- e-Gov 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律:https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132 (2026年9月時点)
- e-Gov 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律:https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000113 (2026年9月時点)
- 厚生労働省告示第52号(求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止指針):https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662589.pdf (2026年9月時点)
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本記事は一般情報であり、個別の法的助言・判断ではありません。個別事案への対応や規程の作成・添削・就業規則改定については、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。
よくある質問
小規模な介護施設(職員10人未満)でも規程整備は必要ですか?
必要です。労働施策総合推進法第33条(改正後)は企業規模による猶予・経過措置を設けておらず、労働者が1人以上いるすべての事業主が対象です。2026年10月1日の施行日は規模にかかわらず同一です。
利用者家族からのクレームはすべてカスハラになりますか?
なりません。告示第51号は「業務の適正な範囲を超えるもの」をカスハラと整理しており、正当な苦情・要望はカスハラには該当しません。規程では正当なクレームへの対応手順とカスハラへの対応手順を区別して定めることが重要です。
訪問介護職員が利用者宅で被害を受けた場合、その場で退出してよいですか?
規程上で「危険を感じた場合の即時退出を認める」と定めることで、職員が萎縮せずに退出できる根拠になります。退出後の報告義務と事後対応の手順も規程に明記しておくことが重要です。
カスハラ防止規程は就業規則とは別に作成する必要がありますか?
就業規則の附属規程として独立させる方法と、就業規則本体に条項を追加する方法のいずれも考えられます。どちらの方法をとるかは施設の規模・既存規程の構成によって異なります。いずれの場合も、就業規則との整合確認と所定の手続きが必要です。
規程を整備しないと即座に罰則が適用されますか?
措置義務違反そのものに直接の罰則(過料等)はありません。ただし、行政指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得ます(改正後第42条第2項)。また、過料20万円以下は報告義務違反(虚偽報告・報告拒否)にのみ適用されます。 ---