小売業 カスハラ 規程 ひな形
小売業のカスハラ規程ひな形|店舗・録画・責任者交代の基準を整備する
公開日 2026-08-11・更新日 2026-08-11
# 小売業のカスハラ規程ひな形|店舗・録画・責任者交代の基準を整備する
小売業がカスタマーハラスメント(カスハラ)規程を整備するうえで押さえるべき項目は、店舗対応手順、録画・録音の運用基準、責任者交代の判断基準、シフト配慮の仕組みの4点です。2026年10月1日に施行される改正労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)第33条に基づき、すべての事業主にカスハラ防止措置が義務付けられます。本記事では、小売業特有の現場環境を踏まえた規程の骨格と、各項目の記載ポイントを整理します。
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法的根拠と施行スケジュール
改正労働施策総合推進法は2025年6月11日に令和7年法律第63号として公布されました。カスハラ防止措置の主要部分の施行日は2026年10月1日です。根拠条文は改正後の第33条で、事業主はカスハラから労働者を守るための雇用管理上の措置を講じなければなりません。
(参照:e-Gov 労働施策総合推進法 https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132 2026年8月時点)
具体的な措置の内容は、2026年2月26日に告示された厚生労働省告示第51号(カスハラ防止指針)に定められています。
(参照:カスハラ防止指針 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf 2026年8月時点)
対象は労働者を1人以上雇用するすべての事業主です。企業規模による猶予や経過措置はありません。措置義務を履行しない場合、行政指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得ます(改正後第42条第2項)。
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小売業でカスハラ規程が必要な理由
小売業は不特定多数の顧客と日常的に接する業種であり、レジ対応、クレーム処理、返品交渉など、カスハラが発生しやすい場面が多岐にわたります。また、パートタイム・アルバイトが多く、経験の浅い従業員が一人でカウンター対応をするケースも少なくありません。
規程を整備する目的は、従業員が「どこまでが通常のクレームで、どこからがカスハラか」「誰に報告し、どう対応するか」を迷わず判断できるようにすることです。口頭の指示だけでは属人的な対応になりやすく、被害の拡大や記録の欠落につながります。
カスハラ規程の初期整備を始める際の全体像については、カスハラ対策ガイドも参照してください。
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規程に盛り込む主要項目
目的と定義
規程の冒頭には、目的と「カスハラ」の定義を明記します。カスハラ防止指針(告示51号)は、カスハラを「顧客等からのクレーム・言動のうち、その要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と整理しています。
(参照:カスハラ防止指針 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf 2026年8月時点)
小売業の規程では、この定義を引用したうえで、自社の業態に即した具体例(長時間の拘束、土下座の強要、SNSへの投稿をちらつかせた脅迫など)を列挙すると、現場での判断基準が明確になります。
適用範囲
規程の適用対象は、正社員・契約社員・パートタイム・アルバイト・派遣労働者を含む、店舗で就労するすべての労働者とします。派遣労働者については、派遣元事業主との連携体制も規程に記載しておくと実務上の混乱を防げます。
相談・報告体制
カスハラが発生した場合の報告ルートを明確にします。小売業では店舗責任者(店長・副店長)が第一次窓口となるケースが多いですが、店舗責任者自身がカスハラを受けた場合や、店舗責任者の対応に問題がある場合に備えて、本部・人事部門への直接報告ルートも設けます。
相談を受けた者が取るべき初動(事実確認、記録作成、上位者への報告)を手順として規程に記載します。相談者のプライバシー保護と不利益取扱いの禁止も明記します。
責任者交代の判断基準
小売業の現場でよく問題になるのが「いつ責任者が出るか」の判断です。規程に判断基準を設けることで、現場スタッフが一人で抱え込む状況を防ぎます。
記載例として参考になる観点は以下のとおりです。
- 顧客の言動が怒声・罵倒・脅迫的な表現を含む場合
- 同一の要求が一定時間(例:30分)以上継続している場合
- 顧客が退去を求めても応じない場合
- 従業員が身の危険を感じた場合
これらの基準はあくまで規程に盛り込む観点の例示であり、自社の業態・店舗規模・人員体制に合わせて具体的な内容を検討してください。
責任者が交代した後の対応手順(警察への通報判断、退去要求の方法、記録の作成)も規程に含めます。
録画・録音の運用基準
防犯カメラや携帯端末による録画・録音は、カスハラの証拠保全として有効ですが、運用ルールを定めておかないと現場が混乱します。規程に記載する観点は以下のとおりです。
- 店舗内の防犯カメラの設置場所と保存期間
- カスハラ発生時に映像を証拠として保全する手順と権限者
- 従業員が携帯端末で録音・録画する場合の許可基準と報告義務
- 録画・録音データの管理責任者と第三者提供の条件
録画・録音は証拠保全の観点から有用ですが、個人情報保護法や各都道府県の迷惑防止条例との関係も踏まえ、法務担当者や専門家に確認しながら運用基準を定めることを推奨します。
シフト配慮の仕組み
カスハラ被害を受けた従業員が同じ顧客と接触し続けることを防ぐため、シフト配慮の仕組みを規程に盛り込みます。
記載する観点の例は以下のとおりです。
- 被害を申告した従業員のシフト変更を申請できる手続き
- 特定顧客への対応を特定の従業員に集中させない配慮
- 被害後の心理的負担を考慮した業務軽減の申請手続き
シフト配慮は従業員の就業継続を支える重要な措置です。申請手続きを明文化することで、従業員が申し出やすい環境を整えます。
顧客への対応方針と取引拒絶
カスハラ防止指針(告示51号)は、事業主が顧客等に対して毅然とした対応をとることを求めています。規程には、悪質なカスハラに対して取引・サービス提供を拒絶できる旨を明記します。
(参照:カスハラ防止指針 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf 2026年8月時点)
具体的には、警告後も行為が継続する場合の退去要求、警察への通報、法的措置の検討といった段階的な対応方針を記載します。
再発防止と研修
規程には、カスハラ発生後の再発防止措置として、事案の記録・分析と定期的な研修の実施を盛り込みます。研修は、カスハラの定義・判断基準・報告手順を全従業員が理解することを目的とします。特に新入社員・新規採用のパートタイム・アルバイトへの周知を規程上の義務として明記します。
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規程の整備手順
規程の初期整備を始める際の手順は以下のとおりです。
- カスハラ防止指針(告示51号)を読み、自社に求められる措置を確認する
- 自社の業態・店舗数・人員体制を踏まえて規程の骨格を作成する
- 就業規則との整合性を確認し、必要に応じて就業規則を改定する
- 全従業員への周知と研修を実施する
- 運用状況を定期的に見直し、規程を更新する
規程のひな形を確認材料にしたい場合は、カスハラ規程ひな形ページをご活用ください。自社の状況に合わせた整備が必要かどうかを確認したい場合は、カスハラ対策診断も参照してください。
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求職者等へのセクシュアルハラスメントへの対応
2026年10月1日施行の改正では、カスハラ防止措置と同時に、求職者等へのセクシュアルハラスメントへの対応も義務化されます。根拠は改正後の雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)第13条です。
(参照:e-Gov 男女雇用機会均等法 https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000113 2026年8月時点)
具体的な措置の内容は、2026年2月26日に告示された求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止指針(告示52号)に定められています。
(参照:求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止指針 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662589.pdf 2026年8月時点)
小売業でも採用活動を行う際には、求職者等へのセクシュアルハラスメントを防止するための規程(求職者等セクシュアルハラスメント防止規程)を整備し、採用担当者への研修を実施することが求められます。カスハラ規程と合わせて整備を進めることを推奨します。
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よくある質問
小規模な個人商店でも規程の整備は必要ですか?
労働者を1人以上雇用するすべての事業主が対象です。企業規模による猶予や経過措置はありません。個人商店であっても、パートタイムやアルバイトを雇用している場合は措置義務の対象となります。規程の形式は自社の規模に応じて簡潔なものでも構いませんが、カスハラの定義・報告手順・相談窓口の3点は最低限明記することを確認材料にしてください。
既存の就業規則にカスハラの条項を追加するだけで足りますか?
就業規則への追記は措置の一部として有効ですが、カスハラ防止指針(告示51号)が求める措置は、規程の整備だけでなく、相談体制の構築、従業員への周知・研修、事案発生後の対応手順の整備など複数の要素を含みます。就業規則の改定と合わせて、これらの措置を包括的に整備することが求められます。
録画・録音の証拠を警察に提出する場合、規程に記載が必要ですか?
警察への提供を含む第三者提供の条件は、規程に記載しておくことで現場の判断基準が明確になります。個人情報保護法上の取り扱いとの整合性も確認が必要です。具体的な記載内容については、法務担当者や専門家に確認することを推奨します。
責任者交代の基準を規程に書く場合、時間の目安は何分が適切ですか?
カスハラ防止指針(告示51号)は具体的な時間の目安を定めていません。自社の業態・店舗規模・人員体制を踏まえて、現場で運用可能な基準を設定してください。重要なのは、基準を明文化して全従業員に周知することです。
勧告に従わない場合の企業名公表はどのような手続きで行われますか?
改正後の労働施策総合推進法第42条第2項に基づき、行政指導・勧告を経てもなお従わない場合に企業名公表の対象となり得ます。措置義務違反があれば自動的に公表されるわけではなく、勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得るという条件付きの手続きです。なお、報告義務(虚偽報告・報告拒否)に対しては20万円以下の過料が適用されますが、これは措置義務違反そのものへの罰則ではありません。 --- 本記事は2026年8月時点の法令・告示に基づく一般情報であり、個別の法的助言・判断ではありません。個別事案の対応や規程の作成・添削については、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。