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カスハラ 社内周知 対象範囲 決め方

カスハラ社内周知の対象範囲と決め方|全社員か管理職かを判断する実務ポイント

公開日 2026-09-30・更新日 2026-09-30

# カスハラ社内周知の対象範囲と決め方|全社員か管理職かを判断する実務ポイント

カスハラ防止措置における社内周知は、管理職だけを対象にするのではなく、全労働者を対象として実施することが求められます。これは2026年10月1日に施行される改正労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)第33条および厚生労働省告示第51号(カスハラ防止指針)に基づく義務です。「管理職だけ研修すれば足りる」「現場スタッフへの周知は任意でよい」という判断は、指針の要求水準を満たしません。

以下では、周知の対象範囲をどのように設定するかの考え方と、実務上の優先順位の付け方を整理します。

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なぜ「全社員対象」が原則なのか

指針が求める周知の位置づけ

厚生労働省告示第51号(カスハラ防止指針)は、事業主が講ずべき措置の一つとして、カスハラに関する方針の明確化と、その方針を労働者に周知・啓発することを定めています。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf(2026年9月時点)

ここでいう「労働者」は、正規・非正規を問わず、事業主が雇用するすべての労働者を指します。パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者(派遣先事業主の指揮命令下にある場合)も含まれます。管理職のみを対象とした周知では、指針が想定する「労働者への周知・啓発」の要件を満たしません。

適用対象は全事業主です。企業規模による猶予・経過措置はありません。 https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132(2026年9月時点)

周知が義務である理由

カスハラ防止措置は任意の取組ではありません。2026年10月1日の施行日以降、事業主は法令上の義務として措置を講じる必要があります。勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得ます(改正後第42条第2項)。

周知・啓発は、この措置義務の中核をなす要素の一つです。方針を策定しても、それが労働者に伝わっていなければ、措置を「講じた」とは評価されにくい状況になります。

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対象範囲の決め方:実務的な考え方

ステップ1:自社の雇用形態を洗い出す

まず、自社にどのような雇用形態の労働者がいるかを確認します。正社員・契約社員・パートタイム労働者・アルバイト・派遣労働者など、雇用形態ごとに周知の手段や頻度を検討する必要があります。

派遣労働者については、派遣元事業主と派遣先事業主の双方に措置義務が生じる場合があります。自社が派遣先である場合は、派遣元との連携も視野に入れてください。

ステップ2:顧客等と接触する業務の範囲を確認する

カスハラのリスクは、顧客・取引先・利用者など「顧客等」と直接接触する業務で特に高まります。しかし、だからといって「接客担当者だけに周知すればよい」という結論にはなりません。

理由は二つあります。第一に、カスハラを受けた労働者を支援する立場にある管理職・上司・人事担当者も、対応方針を正確に理解している必要があります。第二に、間接部門の労働者であっても、電話対応・メール対応・来客対応などで顧客等と接触する機会がある場合は、同様のリスクにさらされます。

したがって、「顧客等と接触する可能性がある労働者」を広めに捉えて周知対象を設定することが実務上の基本的な考え方です。

ステップ3:周知の深度を役割別に設計する

全労働者を対象とすることを前提としつつ、役割に応じて周知の内容と深度を変えることは合理的です。

管理職・監督者に対しては、方針の内容だけでなく、カスハラが発生した際の相談受付・事実確認・被害者支援・再発防止の手順まで理解させる必要があります。現場の一次対応者として機能するためです。

一般労働者に対しては、カスハラの定義・自社の方針・相談窓口の存在・被害を受けた場合の報告手順を中心に周知します。

人事・法務・コンプライアンス担当者に対しては、指針の内容・社内規程の詳細・行政対応の手順まで含めた深い理解が求められます。

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周知の手段と記録の残し方

周知手段の選択

周知の手段は、書面・社内イントラネット・研修・朝礼・掲示板など複数の方法が考えられます。重要なのは、対象となる労働者が実際に内容を確認できる状態にあることです。

たとえば、シフト制で働くパートタイム労働者が多い職場では、イントラネットだけでは周知が届かない場合があります。紙の配布や掲示板への掲示など、実態に合わせた手段を選ぶことが必要です。

社内規程の整備と周知文書の作成については、カスハラシールドの雛形ページで初期整備の参考資料を確認できます。

記録の重要性

周知を実施したことの記録を残すことは、事後的に「措置を講じた」ことを示す上で重要です。研修の実施記録・出席者名簿・配布資料の控え・掲示物の写真などを保管しておくことを検討してください。

記録の形式に法令上の定めはありませんが、いつ・誰に・何を周知したかが確認できる形で残すことが実務上の基本です。

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管理職中心の周知にとどめることのリスク

管理職のみを対象とした周知では、以下のような問題が生じる可能性があります。

第一に、現場の労働者がカスハラを受けた際に、それがカスハラに該当するかどうかを判断できず、相談・報告に至らないケースが増えます。

第二に、管理職が現場の実態を把握できないまま対応を誤るリスクがあります。現場の労働者が「これはカスハラだ」と認識して初めて、管理職への報告・相談が機能します。

第三に、指針が求める「労働者への周知・啓発」の要件を形式的にも満たさない状態になります。

これらのリスクを踏まえると、管理職中心の周知は「コストを抑えた暫定対応」としても適切ではなく、最初から全労働者を対象とした設計が求められます。

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求職者等へのセクシュアルハラスメントとの関係

2026年10月1日には、カスハラ防止措置と同時に、求職者等へのセクシュアルハラスメントに関する措置義務も施行されます。根拠は雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)第13条(改正後)および厚生労働省告示第52号(求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止指針)です。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662589.pdf(2026年9月時点) https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000113(2026年9月時点)

求職者等へのセクシュアルハラスメントの周知対象は、採用面接・インターンシップ対応・説明会運営など、求職者等と接触する業務に携わる労働者を中心に設計することになりますが、採用に関与する管理職・人事担当者への周知は特に重要です。

カスハラ防止措置と求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置は、それぞれ別の法令・指針に基づく独立した義務です。社内周知の設計においても、両者を混同せず、それぞれの対象・内容を明確に区別して実施してください。

自社の対応状況の確認には、カスハラシールドの診断ページを活用できます。

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実務上の優先順位の付け方

2026年10月1日の施行日まで時間的な余裕が限られている場合、以下の順序で初期整備を始めることを検討してください。

まず、カスハラに関する自社の方針を文書化します。方針がなければ、周知する内容が存在しないためです。

次に、相談窓口を設置または既存窓口の対応範囲を明確化します。周知の中で「相談先はここです」と示せる状態にしておく必要があります。

その上で、全労働者を対象とした周知を実施します。研修・配布資料・掲示など、自社の実態に合った手段を選んでください。

管理職向けの対応手順の研修は、一般労働者向けの周知と並行して、または先行して実施することが効果的です。

詳細な対応の流れはカスハラシールドのガイドページで確認できます。

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よくある質問

パートタイム労働者やアルバイトも周知の対象に含めなければなりませんか?

はい、含める必要があります。指針が求める「労働者への周知・啓発」は、雇用形態を問わず事業主が雇用するすべての労働者を対象としています。正社員のみを対象とした周知では、指針の要件を満たしません。

派遣労働者への周知は派遣元と派遣先のどちらが行うのですか?

派遣元事業主と派遣先事業主の双方に措置義務が生じる場合があります。派遣先事業主は、自社の指揮命令下で就労する派遣労働者についても、カスハラ防止措置の対象として扱う必要があります。具体的な役割分担は、派遣元との契約・協議の中で確認してください。

管理職向けと一般社員向けで研修内容を分けることは認められますか?

全労働者を対象とすることを前提とした上で、役割に応じて内容の深度を変えることは合理的な設計です。管理職には対応手順まで含めた研修を、一般労働者には方針・定義・相談窓口を中心とした周知を行うという設計は、指針の趣旨に沿っています。

周知を実施したことを証明する書類は何を残せばよいですか?

法令上、特定の書式は定められていません。いつ・誰に・何を周知したかが確認できる記録(研修の実施記録・出席者名簿・配布資料の控え・掲示物の写真など)を保管しておくことが実務上の基本的な対応です。

施行日の2026年10月1日までに周知が間に合わない場合はどうなりますか?

2026年10月1日以降、措置義務は法令上の義務として効力を持ちます。施行日以降に措置が講じられていない状態が続く場合、行政指導・勧告の対象となる可能性があります。勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得ます。施行日を見据えて、できる限り早期に初期整備を始めることが重要です。 --- 本記事は2026年9月時点の法令・指針に基づく一般情報であり、個別の法的助言・判断ではありません。具体的な対応については、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。