カスハラ相談内容 秘密保持 範囲
カスハラ相談内容の秘密保持と社内共有の範囲
公開日 2026-10-19・更新日 2026-10-19
# カスハラ相談内容の秘密保持と社内共有の範囲
カスハラ(顧客等からの著しい迷惑行為)に関する相談を受けた際、相談内容をどこまで社内で共有してよいかは、多くの事業主が迷う実務上の論点です。結論から述べると、相談者・行為者双方のプライバシーや名誉を保護しながら、対応に必要な範囲に限定して共有することが、事業主に求められる措置の基本的な考え方です。
2026年10月1日に施行された労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)第33条(改正後)および厚生労働省告示第51号(カスハラ防止指針)は、事業主に対してカスハラ相談への対応体制の整備を義務として定めています。秘密保持はその体制の中核をなす要素の一つです。
法改正前の情報に基づく記事は、現行の義務内容と異なる場合があります。本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成しています。
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なぜ秘密保持が義務的措置に含まれるのか
相談者が安心して相談できる環境の確保
カスハラ防止指針(告示第51号)は、相談窓口の整備にあたって、相談者が不利益を受けないよう配慮することを事業主の措置として位置づけています。相談内容が不必要に広まれば、相談者は「相談したことで職場での立場が悪くなるのではないか」と懸念し、相談をためらうようになります。相談窓口が機能するためには、秘密が守られるという信頼が前提です。
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf
行為者・第三者のプライバシー保護
相談内容には、顧客等の行為者に関する情報や、目撃した同僚・第三者に関する情報が含まれることがあります。これらの情報を必要以上に共有することは、プライバシーの侵害につながるおそれがあります。事業主は、相談対応の過程で知り得た情報を適切に管理する責任を負います。
事実確認の公正性の確保
相談内容が事前に広まると、事実確認の過程で関係者の証言が影響を受けたり、行為者とされる顧客等との関係が不必要に悪化したりするリスクがあります。適切な秘密保持は、公正な事実確認を行うための前提条件でもあります。
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社内共有の「必要な範囲」とはどこまでか
共有が認められる基本的な考え方
カスハラ防止指針(告示第51号)の趣旨に照らすと、相談内容の共有は「対応のために必要な情報を、対応に関与する必要がある者に限定して共有する」という原則が基本となります。この原則を実務に落とし込むと、以下の観点から判断することになります。
共有の目的が対応のためであること 相談内容を共有する目的は、被害を受けた労働者を守り、再発を防ぐための対応を行うことです。情報共有の目的がこの範囲を超える場合(例:社内の話題として広める、関係のない部署に伝えるなど)は、秘密保持の観点から問題があります。
共有する相手が対応に関与する必要がある者であること 相談内容を知る必要があるのは、直接対応にあたる担当者、上位の管理職(対応方針の決定に必要な場合)、法務・人事など専門的判断が必要な部署に限られます。相談者の直属の上司であっても、その上司が行為者と密接な関係にある場合や、共有することで相談者に不利益が生じるおそれがある場合は、共有の範囲から外すことを検討する必要があります。
共有する情報の範囲を最小限にすること 対応に必要な情報のみを共有し、相談者の個人情報や、対応に直接関係しない詳細は共有しないことが求められます。たとえば、対応方針を決定する会議では、相談者の氏名を伏せた形で情報を共有できる場合はそのようにすることが考えられます。
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf
共有してはならない情報の例
以下のような情報の共有は、秘密保持の観点から慎重に扱う必要があります。
- 相談者が「秘密にしてほしい」と明示した情報
- 相談者の氏名・所属・連絡先など、対応に不要な個人情報
- 相談内容のうち、対応方針の決定に直接関係しない詳細
- 事実確認が完了していない段階での行為者の特定情報
経営層・役員への報告はどう扱うか
カスハラ対応の方針決定や、組織としての対応を行うために経営層・役員への報告が必要になる場合があります。この場合も、報告する情報は対応方針の決定に必要な範囲に限定し、相談者が特定されないよう配慮することが基本です。ただし、深刻な被害が生じている場合や、組織的な対応が不可欠な場合には、より詳細な情報の共有が必要になることもあります。その際も、共有した情報が対応目的以外に使用されないよう、情報を受け取る側に対して秘密保持を明確に求めることが重要です。
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相談窓口担当者が守るべき実務上のポイント
相談受付時に秘密保持の範囲を説明する
相談を受ける際、担当者は相談者に対して「対応のために必要な範囲で社内の関係者と情報を共有することがある」という点をあらかじめ説明しておくことが重要です。相談者が「誰にも言わないでほしい」と求めた場合でも、対応のために最低限の共有が必要になることがあるため、その点を丁寧に説明し、相談者の理解を得ながら進めることが求められます。
記録の管理と閲覧権限の設定
相談内容を記録する場合、その記録へのアクセス権限を対応担当者に限定することが必要です。紙の記録であれば施錠できる場所での保管、電子データであればアクセス権限の設定が基本的な対応となります。記録の保管期間についても、対応完了後の取り扱いを含めてあらかじめ定めておくことが望ましいです。
相談者への経過報告と情報共有の確認
対応が進む中で、相談者に対して経過を報告する際にも、どの情報をどの範囲で共有したかを相談者に伝え、不安を軽減することが重要です。相談者が「自分の情報がどこまで共有されているか分からない」という状態になると、相談窓口への信頼が損なわれます。
外部機関への情報提供
弁護士や社会保険労務士など外部の専門家に相談する場合、または行政機関への報告が必要になる場合には、相談者に対してその旨を事前に説明し、可能な限り同意を得ることが求められます。外部への情報提供は、内部共有以上に慎重な判断が必要です。
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規程・マニュアルへの明記が求められる理由
カスハラ防止指針(告示第51号)は、相談対応の手順や秘密保持に関する事項を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定することを、事業主の措置として求めています。口頭での申し合わせだけでは、担当者が変わった際に対応が一貫しなくなるリスクがあります。
規程やマニュアルに明記すべき事項としては、以下が考えられます。
- 相談内容の秘密保持に関する基本方針
- 社内共有の範囲と共有先の決定手順
- 記録の管理方法と閲覧権限
- 秘密保持義務に違反した場合の取り扱い
- 相談者への説明事項
規程の整備にあたっては、カスハラシールドのガイドも参考にしながら、自社の実態に合った内容を検討してください。また、規程のひな形についてはひな形ページをご活用ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf
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義務違反が生じた場合のリスク
労働施策総合推進法第33条(改正後)に基づく措置義務を履行しない場合、行政指導の対象となり得ます。勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得ます(根拠:改正後第42条第2項)。
https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132
秘密保持の不徹底は、相談者からの損害賠償請求や、相談窓口への信頼喪失による機能不全にもつながります。法的リスクと実務上のリスクの両面から、秘密保持の仕組みを整えることが重要です。
自社の対応状況を確認したい場合は、カスハラシールドの診断ツールをご活用ください。
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よくある質問
相談者の上司に相談内容を伝えてよいですか?
相談者の上司への共有は、対応に必要かどうかを個別に判断する必要があります。上司が対応方針の決定や被害者支援に関与する必要がある場合は共有の対象となり得ますが、上司が行為者と近い関係にある場合や、共有によって相談者に不利益が生じるおそれがある場合は、共有を控えることを検討してください。相談者に対して共有の範囲を事前に説明し、理解を得ながら進めることが基本です。
相談内容を人事部門全体で共有してもよいですか?
人事部門であっても、対応に直接関与しない担当者への共有は秘密保持の観点から慎重に扱う必要があります。共有する相手は、対応方針の決定や実際の対応に関与する必要がある者に限定することが基本です。部門全体への共有は、原則として避けることが求められます。
相談内容を記録した文書はどのように管理すればよいですか?
相談記録へのアクセス権限を対応担当者に限定し、紙の場合は施錠できる場所での保管、電子データの場合はアクセス権限の設定を行うことが基本です。保管期間と対応完了後の取り扱いについても、あらかじめ規程に定めておくことが求められます。
相談者が「誰にも言わないでほしい」と言った場合、社内共有は一切できませんか?
相談者の意向は最大限尊重する必要がありますが、対応のために最低限の情報共有が必要になる場合があります。その場合は、相談者に対して「対応のためにこの範囲で共有する必要がある」という点を丁寧に説明し、理解を得ながら進めることが求められます。相談者の同意なく広範に共有することは、秘密保持の観点から問題があります。
カスハラ防止指針(告示第51号)は全事業主に適用されますか?
労働施策総合推進法第33条(改正後)および告示第51号に基づく措置義務は、全事業主に適用されます。2026年10月1日が施行日です。適用範囲については、e-Gov掲載の法令本文もご確認ください。 https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132 --- 本記事は一般情報であり、個別の法的助言・判断ではありません。具体的な対応については、弁護士や社会保険労務士などの専門家にご相談ください。