カスハラ相談窓口 一次対応 流れ
カスハラ相談窓口の一次対応:受付から記録までの流れ
公開日 2026-10-17・更新日 2026-10-17
# カスハラ相談窓口の一次対応:受付から記録までの流れ
カスハラ相談窓口に相談が入ったとき、担当者が最初にすべきことは「聴く・記録する・つなぐ」の三段階です。この順序を事前に整備しておくことが、2026年10月1日施行の義務への対応において核心となります。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)第33条(改正後)は、事業主にカスタマーハラスメント(カスハラ)に関する措置を義務として課しています。相談窓口の設置と一次対応の手順整備は、その措置の中心的な要素です。本記事では、相談を受けた瞬間から一次対応が完結するまでの流れを実務的に整理します。
法改正前の情報に基づく記事は、現行の義務内容と異なる場合があります。本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成しています。
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なぜ一次対応の手順を事前に決めておく必要があるか
相談窓口が機能するかどうかは、担当者が「その場で何をすべきか」を迷わずに動けるかどうかにかかっています。手順が決まっていなければ、担当者は相談者への対応と記録と報告を同時に判断しなければならず、対応の質が担当者個人の経験に依存してしまいます。
厚生労働省告示第51号(カスハラ防止指針)は、相談窓口の整備と相談への対応を事業主の措置として位置づけています。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf(2026年10月時点)
指針が求めているのは「窓口を設ける」だけではなく、相談を受けた後の対応が実際に機能することです。そのためには、担当者が動ける手順書と、記録様式と、報告先の明確化が必要です。
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一次対応の全体像
一次対応とは、相談が窓口に届いてから、担当者が初期情報を整理して次の対応者・部門に引き継ぐまでの段階を指します。この段階では、事実認定や行為者への対応は行いません。一次対応の目的は次の三点です。
- 相談者が安心して話せる環境をつくる
- 相談内容を正確に記録する
- 適切な担当者・部門に情報をつなぐ
この三点を担当者が確実に実行できるよう、手順を文書化しておくことが整備の出発点です。
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ステップ1:相談の受付と場の設定
相談が入ったとき、担当者がまず行うのは「安全に話せる場をつくること」です。
対面・電話・メール・チャットなど、相談の経路はさまざまです。どの経路であっても、担当者は次の点を最初に確認します。
- 相談者が今、安全な状況にあるか
- 相談内容を第三者に聞かれる可能性がある場所・状況ではないか
- 相談者が話を続けられる状態にあるか
対面の場合は個室または外から見えない場所に移動します。電話の場合は「今、周りに人がいますか」と確認してから本題に入ります。メール・チャットの場合は、返信内容が第三者に見られないよう注意を促します。
この段階で担当者が「内容を確認する前に」伝えるべきことがあります。それは「相談内容は担当者が勝手に外部に漏らすことはない」という守秘の説明です。相談者が安心して話せるかどうかは、この最初の一言にかかっています。
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ステップ2:相談内容の傾聴と初期確認
場が整ったら、担当者は相談者の話を聴きます。この段階では、担当者が事実を判断したり、行為者の言い分を代弁したりしてはいけません。
傾聴の基本姿勢は次のとおりです。
- 相談者の話をさえぎらない
- 「それはあなたの受け取り方では」などの否定的な反応をしない
- 「大変でしたね」など感情を受け止める言葉を使う
話を聴きながら、担当者は次の情報を確認します。
- いつ、どこで、何が起きたか
- 行為者は誰か(顧客・取引先・その他)
- 相談者はどのような状況に置かれているか(現在も継続しているか)
- 相談者が窓口に求めていることは何か(話を聴いてほしい、対応してほしい、など)
最後の「相談者が求めていること」の確認は特に重要です。相談者が「対応を求めている」のか「まず話を聴いてほしい」のかによって、次のステップが変わります。担当者が相談者の意向を確認せずに動くと、相談者が望まない形で事態が進んでしまうことがあります。
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ステップ3:相談記録の作成
傾聴が終わったら、担当者は相談内容を記録します。記録は後の対応・調査・報告の基礎となるため、正確さが求められます。
記録に含める項目の例は次のとおりです。
- 相談受付日時・経路(対面・電話・メール等)
- 相談者の氏名・所属・連絡先
- 行為者に関する情報(氏名・会社名・関係性など、判明している範囲)
- 相談内容の概要(いつ・どこで・何が・どのように)
- 相談者が求めていること
- 担当者が行った対応の内容
- 次のステップ(誰に引き継ぐか)
記録は担当者の主観や解釈を交えず、相談者が話した内容をできるだけそのままの言葉で残します。「〇〇と感じた」ではなく「〇〇と言っていた」という形で記録します。
記録様式をあらかじめ用意しておくと、担当者が記録漏れを防ぎやすくなります。様式のひな型についてはカスハラ対応書式集を参考にしてください。
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ステップ4:相談者への説明と次のステップの確認
記録が終わったら、担当者は相談者に対して次の点を説明します。
- 今後の対応の流れ(誰が、いつ、何をするか)
- 相談者に連絡が入るタイミング
- 相談者が追加情報を提供したい場合の連絡先
この説明は「相談者を放置しない」ためのものです。相談者は相談した後に「どうなるのか」が見えないと不安になります。担当者が「次に何が起きるか」を明確に伝えることで、相談者の不安を軽減できます。
また、相談者に対して「相談したことで不利益な扱いを受けることはない」と伝えることも重要です。これは労働施策総合推進法第33条(改正後)が求める措置の一部であり、相談者が報復を恐れずに相談できる環境を確保するためのものです。 https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132(2026年10月時点)
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ステップ5:担当部門への引き継ぎ
一次対応の最後のステップは、記録と情報を適切な担当者・部門に引き継ぐことです。
引き継ぎ先は事業主があらかじめ定めておく必要があります。一般的には次のような体制が考えられます。
- 人事部門または総務部門が一次対応を担い、管理職または専門チームに引き継ぐ
- 外部の相談窓口(EAP等)が一次対応を担い、事業主側の担当者に情報を共有する
引き継ぎの際には、記録した情報を漏れなく伝えます。口頭だけでなく、記録文書を共有することで情報の欠落を防ぎます。
引き継ぎ後の対応(事実確認・行為者への対応・再発防止策の検討など)は二次対応以降の段階です。一次対応の担当者が引き継ぎ後も個人で抱え込まないよう、役割分担を明確にしておくことが重要です。
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担当者が一次対応で「してはいけないこと」
手順と同様に、担当者が一次対応でしてはいけないことを明確にしておくことも整備の一部です。
- 相談者の話を途中で否定する
- 「それはカスハラではない」と担当者が判断する(一次対応の段階では事実認定をしない)
- 相談者の同意なく行為者や第三者に情報を伝える
- 「自分で解決してください」と相談を打ち切る
- 記録を取らずに口頭だけで対応を終わらせる
これらは相談者の信頼を損ない、窓口が機能しなくなる原因となります。担当者向けの研修や手順書に明記しておくことが整備の実効性を高めます。
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手順書と様式の整備から始める
一次対応の流れを整備するには、手順書と記録様式の二つが最低限必要です。手順書は「担当者が相談を受けたときに何をするか」をステップごとに記載したものです。記録様式は「何を記録するか」の項目を定めたものです。
これらを整備することで、担当者が変わっても対応の質が一定に保たれます。また、対応の記録が蓄積されることで、再発防止策の検討にも活用できます。
整備の進め方や書式の参考として、カスハラ対応の基本ガイドおよびカスハラ対応書式集をご活用ください。自社の対応状況を確認したい場合はカスハラ対応診断も参考にしてください。
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2026年10月1日施行の義務と現在の対応状況の確認
労働施策総合推進法第33条(改正後)に基づくカスハラ対策の主要部分は、2026年10月1日に施行されています。適用対象は全事業主です。
カスハラ防止指針(告示51号)は相談窓口の整備と一次対応の手順化を事業主の措置として位置づけています。相談窓口を設けるだけでなく、担当者が実際に動ける手順と記録の仕組みを整えることが求められます。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf(2026年10月時点)
勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得ます。
なお、カスハラ対策と並行して、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)第13条(改正後)に基づく求職者等へのセクシュアルハラスメントへの対応も同日施行の義務です。求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止指針(告示52号)とあわせて確認してください。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662589.pdf(2026年10月時点) https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000113(2026年10月時点)
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よくある質問
相談窓口の担当者は専任でなければなりませんか?
告示51号(カスハラ防止指針)は担当者の専任・兼任を区別していません。重要なのは、担当者が一次対応の手順を理解し、実際に動ける状態にあることです。兼任の場合でも、手順書の整備と研修の実施によって対応の質を確保することが求められます。
相談が電話で入った場合、その場で記録できない場合はどうすればよいですか?
通話中にメモを取り、通話終了後すみやかに正式な記録様式に転記する手順を定めておくことが実務的です。記録の遅延は情報の欠落につながるため、転記は当日中に行うことを手順書に明記しておくことが望ましいです。
相談者が「記録しないでほしい」と言った場合はどうすればよいですか?
相談者の意向を尊重しつつ、記録が相談者を守るためのものであることを説明します。それでも相談者が記録を望まない場合の対応方針(例:匿名での記録、記録範囲の限定など)をあらかじめ定めておくことが整備の一部です。個別の判断については、社内の法務担当者や専門家に確認することをお勧めします。
一次対応の担当者が相談内容を上司に報告することは守秘義務違反になりますか?
相談窓口の運営上、担当者が定められた報告先(上司・人事部門等)に情報を共有することは、あらかじめ相談者に説明しておくことで守秘の範囲内に含めることができます。「誰に情報が共有されるか」を相談受付時に説明しておくことが重要です。具体的な運用については、社内規程の整備と専門家への確認をお勧めします。
カスハラの一次対応と、求職者等へのセクシュアルハラスメントの一次対応は同じ窓口で対応できますか?
同一の窓口で対応することは可能ですが、それぞれの根拠法令と指針が異なります。カスハラは労働施策総合推進法第33条(改正後)・告示51号、求職者等へのセクシュアルハラスメントは男女雇用機会均等法第13条(改正後)・求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止指針(告示52号)に基づきます。窓口を統合する場合でも、それぞれの対応手順と記録様式を区別して整備することが求められます。 --- 本記事は一般情報であり、個別の法的助言・判断ではありません。具体的な対応については、社内の法務担当者または専門家にご相談ください。