カスハラ 相談窓口 設置方法
カスハラ相談窓口の設置方法|既存窓口の活用から周知まで
公開日 2026-09-05・更新日 2026-09-05
# カスハラ相談窓口の設置方法|既存窓口の活用から周知まで
カスハラ(顧客等からの著しい迷惑行為)に関する相談窓口の設置は、2026年10月1日施行の改正労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)第33条に基づく事業主の義務です。既存のハラスメント相談窓口を活用しながら整備を進めることができます。本記事では、窓口の設置手順・担当者の選定・周知方法を順を追って解説します。
---
相談窓口の設置がなぜ義務なのか
2025年6月11日に公布された令和7年法律第63号により、労働施策総合推進法第33条が改正されました。これにより、すべての事業主(労働者を1人以上雇用する事業主)は、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)から労働者を守るための措置を講じることが義務付けられています。企業規模による猶予や経過措置はありません。
具体的な措置の内容は、2026年2月26日に告示された厚生労働省告示第51号(カスハラ防止指針)に定められています。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf
相談窓口の設置はその中核的な措置の一つです。窓口がなければ、労働者が被害を申し出る場所がなく、事業主が適切に対応する起点を失うことになります。
---
既存窓口を活用する方法
多くの事業主はすでにパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの相談窓口を設けています。カスハラ専用の窓口を新たに設けることが望ましい場合もありますが、既存のハラスメント相談窓口をカスハラにも対応できるよう拡張する方法も認められています。
既存窓口を活用する場合に確認すべき点は次のとおりです。
対応範囲の明示
窓口の案内文や規程に「顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)に関する相談も受け付ける」と明記します。従来の案内文が社内ハラスメントのみを対象としている場合は、文言を追加・修正してください。
担当者の知識補充
既存窓口の担当者がカスハラの定義・判断基準・対応手順を理解しているかを確認します。カスハラ防止指針(告示51号)では、顧客等からの著しい迷惑行為として「暴行・脅迫」「著しく不当な要求」「長時間の拘束」などが例示されています。担当者がこれらを正確に把握していなければ、相談を受けても適切に対処できません。
記録様式の整備
カスハラ相談は、発生日時・場所・行為の内容・相談者の状況・対応経過を記録する必要があります。既存窓口の記録様式がカスハラに対応していない場合は、項目を追加します。
---
新たに窓口を設置する場合の手順
既存窓口の拡張ではなく、カスハラ専用窓口を設ける場合の基本的な手順を示します。
ステップ1:窓口の形態を決める
窓口の形態には主に次の選択肢があります。
- 社内担当者による窓口(人事部門・総務部門など)
- 外部機関(社会保険労務士事務所・EAP機関など)への委託
- 社内窓口と外部窓口の併設
どの形態を選ぶ場合も、相談者が利用しやすい方法(対面・電話・メール・チャットなど)を複数用意することが実務上有効です。
ステップ2:担当者を選定する
担当者の選定にあたっては、次の点を考慮します。
- 相談者のプライバシーを守れる立場にあること
- 相談内容を適切に記録・報告できること
- カスハラの定義と対応手順を理解していること
- 相談者が話しやすいと感じられる関係性にあること
担当者が1人だけでは、担当者自身が当事者になった場合や長期休暇中に対応できなくなります。複数名を指定するか、代替担当者を明確にしておきます。
ステップ3:相談対応の手順を定める
相談を受けた後の流れを文書化します。最低限、次の項目を定めてください。
- 相談受付から初期対応までの時間的目安
- 事実確認の方法(相談者・関係者へのヒアリング手順)
- 上位管理職・法務・外部専門家への報告・エスカレーションの基準
- 相談者へのフィードバックの方法と時期
- 記録の保管期間と管理方法
対応手順の雛形については カスハラシールドの規程・書式テンプレート も参考にしてください。
ステップ4:規程に反映する
就業規則またはカスハラ防止規程に、相談窓口の設置・担当者・対応手順を明記します。規程の整備状況を確認したい場合は カスハラ対策診断 をご活用ください。
---
担当者に必要な知識と研修
担当者が相談を適切に処理するためには、次の知識が必要です。
カスハラの定義と判断基準
カスハラ防止指針(告示51号)は、「顧客等からの著しい迷惑行為」を「社会通念上相当な範囲を超えた言動であって、労働者の就業環境が害されるもの」と定義しています。「著しい」かどうかの判断は、行為の態様・継続性・労働者への影響などを総合的に考慮します。
担当者は、正当なクレームとカスハラを区別する視点を持つ必要があります。顧客の要求内容が正当であっても、その手段・態様が社会通念上相当な範囲を超えていればカスハラに該当し得ます。
二次被害の防止
相談者が相談したことで不利益を受けたり、相談内容が不必要に広まったりすることは二次被害にあたります。担当者は、相談者の同意なく情報を共有しないこと、相談を理由とした不利益取扱いを行わないことを徹底する必要があります。
担当者自身のケア
カスハラ相談の内容は、担当者にとっても精神的な負担になることがあります。担当者が一人で抱え込まないよう、上位管理職や外部専門家に相談できる体制を整えておくことが重要です。
---
周知の方法
窓口を設置しても、労働者が知らなければ機能しません。カスハラ防止指針(告示51号)は、事業主が講ずべき措置の一つとして、相談窓口の周知を求めています。
周知の手段
- 就業規則・カスハラ防止規程への記載
- 社内イントラネット・掲示板への掲示
- 入社時・定期研修での説明
- 名刺サイズのカード・ポスターなど携帯・掲示しやすい媒体の配布
周知内容に含めるべき事項
- 窓口の名称・連絡先(電話番号・メールアドレスなど)
- 受付時間
- 担当者または担当部署名
- 相談できる内容の範囲(カスハラを含むことを明示)
- 相談者のプライバシーが守られること
- 相談したことを理由に不利益取扱いを行わないこと
周知のタイミング
窓口設置時の一度きりではなく、定期的に周知を繰り返すことが実務上有効です。年1回の全体研修や、カスハラ事案が発生した際の再周知など、複数の機会を設けることを検討してください。
---
施行日と対応の優先順位
2026年10月1日が施行日です。この日以降、相談窓口の設置を含むカスハラ防止措置を講じていない事業主は、労働施策総合推進法第33条の義務に違反することになります。
対応の優先順位として、まず既存のハラスメント相談窓口がカスハラに対応できるかを確認し、対応できない場合は拡張または新設の手順を進めることをお勧めします。規程・周知・研修の整備は並行して進めることができます。
カスハラ防止措置の全体像については カスハラシールド ガイド で詳しく解説しています。
なお、厚生労働省が報告を求めた場合に虚偽の報告をしたり報告を拒否したりした場合は、20万円以下の過料の対象となります。また、勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得ます(改正後第42条第2項)。
法令の詳細はe-Govでご確認ください(2026年9月時点)。 https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132
---
よくある質問
小規模な事業所でも相談窓口の設置は義務ですか?
はい、義務です。改正労働施策総合推進法第33条は、労働者を1人以上雇用するすべての事業主を対象としています。企業規模による猶予や経過措置はありません。小規模事業所の場合、社内担当者を1名指定し、外部の社会保険労務士事務所や相談機関と連携する形で対応することも一つの方法です。
既存のパワハラ相談窓口をそのまま使えますか?
既存窓口をカスハラにも対応できるよう拡張することは認められています。ただし、窓口の案内文・規程・担当者の知識・記録様式がカスハラに対応しているかを確認し、必要な修正を加えることが必要です。案内文にカスハラを対象とすることを明記していない場合、労働者が相談をためらう可能性があります。
外部機関に窓口を委託することはできますか?
できます。社会保険労務士事務所やEAP(従業員支援プログラム)機関などへの委託は、カスハラ防止指針(告示51号)の趣旨に沿った対応として認められています。委託する場合も、委託先の対応範囲・手順・情報管理の方法を事前に確認し、労働者への周知を事業主自身が行う必要があります。
相談窓口の担当者に特別な資格は必要ですか?
法令上、特定の資格が必要とは定められていません。ただし、担当者はカスハラの定義・判断基準・対応手順を理解し、相談者のプライバシーを守れる立場にある必要があります。担当者向けの研修を実施し、カスハラ防止指針(告示51号)の内容を把握させることが実務上重要です。
相談窓口の設置だけで義務を果たしたことになりますか?
なりません。カスハラ防止指針(告示51号)が求める措置は、相談窓口の設置にとどまりません。事業主の方針の明確化・周知、相談対応体制の整備、被害を受けた労働者へのケア、再発防止措置など、複数の措置を組み合わせて講じることが求められています。相談窓口は措置の起点であり、全体の体制整備が必要です。 --- 本記事は2026年9月時点の法令・告示に基づく一般情報であり、個別の法的助言・判断ではありません。具体的な対応については、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。