カスハラ 電話クレーム 一次対応 手順
カスハラ電話クレームの一次対応手順と法的義務
公開日 2026-10-20・更新日 2026-10-20
# カスハラ電話クレームの一次対応手順と法的義務
電話でのカスタマーハラスメント(カスハラ)は、担当者が一人で対応しやすい分、被害が見えにくく深刻化しやすい類型です。2026年10月1日に施行された改正労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)第33条により、事業主はカスハラから労働者を守るための措置を講じる義務を負います。本記事では、電話クレームの一次対応手順を中心に、義務の内容と実務上の整備ポイントを解説します。
法改正前の情報に基づく記事は、現行の義務内容と異なる場合があります。本記事は2026年10月時点の法令に基づいています。
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カスハラ電話対応を整備すべき法的根拠
労働施策総合推進法第33条と告示51号
2026年10月1日施行の改正労働施策総合推進法第33条は、事業主に対してカスハラ防止のための雇用管理上の措置を義務として課しています。適用対象は全事業主です。
厚生労働省告示第51号(カスハラ防止指針)は、事業主が講ずべき措置の具体的な内容を定めています。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf(2026年10月時点)
e-Gov 労働施策総合推進法: https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132(2026年10月時点)
告示51号が示す措置の柱は、大きく次の四つです。
- 事業主の方針の明確化と周知・啓発
- 相談体制の整備
- 被害を受けた労働者へのケア・再発防止
- カスハラ行為者への適切な対応
電話クレームの一次対応手順は、これらのうち「相談体制の整備」および「被害を受けた労働者へのケア」と密接に関わります。手順が整備されていなければ、担当者が一人で抱え込み、被害が拡大するリスクがあります。
勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得ます(改正後第42条第2項)。
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電話クレーム一次対応の基本的な考え方
「一次対応」の目的を明確にする
一次対応の目的は、問題を即座に解決することではありません。情報を正確に収集し、適切な担当者・部署へつなぐことが主な役割です。この認識を担当者全員が共有していないと、権限外の約束をしてしまったり、長時間の電話に一人で対応し続けたりする事態が生じます。
一次対応者に求められるのは以下の三点です。
- 相手の話を遮らず、要点を聞き取る
- 事実と感情を分けて記録する
- 自分の権限を超える要求は即座にエスカレーションする
カスハラと通常クレームの区別
すべての電話クレームがカスハラに該当するわけではありません。告示51号は、カスハラを「顧客等からの著しい迷惑行為」と位置づけており、社会通念上相当な範囲を超えた言動が対象です。一次対応者が現場で判断に迷わないよう、事前に「カスハラに該当する言動の例示リスト」を社内で整備しておくことが重要です。
電話でのカスハラに典型的な言動例としては、次のようなものが挙げられます。
- 長時間にわたる拘束(業務に支障が生じる程度の継続)
- 脅迫的・侮辱的な言葉の繰り返し
- 担当者個人への過度な謝罪要求や土下座要求
- 根拠のない金銭補償の要求
これらの例示はあくまで参考であり、個別事案の判断は専門家にご相談ください。
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電話クレーム一次対応の手順
ステップ1:受電時の基本姿勢と情報収集
電話を受けたら、まず落ち着いて相手の話を聞きます。この段階では反論や謝罪の言葉を急がず、「おっしゃっていることを正確に確認させてください」という姿勢で臨みます。
収集すべき情報は以下のとおりです。
- 発生した事象の概要(いつ・どこで・何が起きたか)
- 相手が求めていること(要求内容)
- 相手の連絡先(折り返し連絡が必要な場合)
この段階では「確認して折り返します」という対応が基本です。その場での回答を急かされても、権限外の約束はしません。
ステップ2:カスハラ該当性の判断と記録
通話中または通話直後に、以下の点を記録します。
- 通話開始・終了時刻
- 相手の言動の具体的な内容(できる限り逐語的に)
- 自分が感じた心理的負荷の程度
記録は後日の対応方針決定や、必要に応じた証拠保全のために重要です。記録様式はあらかじめ統一しておくと、担当者ごとのばらつきを防げます。対応記録の雛形はこちらから確認できます。
カスハラ該当性の判断は一次対応者が単独で行う必要はありません。「判断に迷う場合は上長に報告する」というルールを明文化しておくことが重要です。
ステップ3:エスカレーションの基準と手順
以下のいずれかに該当する場合は、一次対応者が単独で対応を続けず、速やかに上長または専任担当者へエスカレーションします。
- 脅迫・侮辱的な言動が続いている
- 同一人物から繰り返し電話がかかっている
- 要求内容が明らかに不当または権限外である
- 担当者が強い心理的負荷を感じている
エスカレーション後は、上長が対応を引き継ぐか、複数名で対応する体制に切り替えます。「一人で抱え込まない」という原則を組織として徹底することが、告示51号が求める相談体制の実質的な整備につながります。
ステップ4:通話の打ち切り基準
カスハラに該当する言動が続く場合、通話を打ち切ることは事業主・担当者の正当な対応です。ただし、打ち切りの判断を担当者個人に委ねると、心理的ハードルが高くなります。
あらかじめ「〇分以上の拘束が続く場合」「侮辱的な言葉が繰り返された場合」など、打ち切りの基準を社内ルールとして明文化しておくことが重要です。打ち切り時の定型文(例:「これ以上の対応が困難なため、一度お電話を終わらせていただきます」)も準備しておくと、担当者が迷わず行動できます。
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一次対応後に事業主が行うべきこと
担当者へのフォローアップ
カスハラ電話を受けた担当者には、通話後に上長が声をかけ、心理的な状態を確認します。必要に応じて産業医や外部相談窓口への案内を行います。告示51号は、被害を受けた労働者へのケアを事業主の義務として明示しています。
再発防止のための情報共有
個別の対応事例(個人情報に配慮した形で)を社内で共有し、対応手順の改善に活かします。同一の顧客から繰り返し電話がある場合は、対応履歴を蓄積し、組織として対応方針を統一します。
社内規程・マニュアルの整備
一次対応手順は口頭での申し送りではなく、文書化して全担当者が参照できる状態にします。規程やマニュアルの初期整備を始める際は、カスハラ対策ガイドも参考にしてください。また、自社の対策状況を確認したい場合はカスハラ対策診断をご活用ください。
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よくある質問
電話クレームへの対応手順を整備する義務はすべての事業主にありますか?
2026年10月1日施行の改正労働施策総合推進法第33条および告示51号に基づき、カスハラ防止のための措置を講じることは全事業主の義務です。電話クレームの一次対応手順の整備は、相談体制の整備という措置の一環として位置づけられます。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf(2026年10月時点)
カスハラに該当するかどうかの判断を一次対応者が行う必要がありますか?
一次対応者が単独で判断する必要はありません。「判断に迷う場合は上長に報告する」というルールを社内で明文化し、組織として判断する体制を整えることが重要です。一次対応者に過度な判断責任を負わせる運用は、担当者の心理的負荷を高めるリスクがあります。
通話を打ち切ることは法的に問題がありますか?
カスハラに該当する言動が続く場合に通話を打ち切ることは、事業主・担当者の正当な対応として認められています。ただし、打ち切りの基準や手順を社内ルールとして明文化しておくことで、担当者が迷わず行動できる環境を整えることが重要です。個別事案の判断については専門家にご相談ください。
電話対応の記録はどのように保管すればよいですか?
記録の保管期間や方法は、社内規程として定めることが重要です。後日の対応方針決定や証拠保全に活用できるよう、通話日時・内容・対応者・エスカレーションの有無などを統一様式で記録します。様式の参考として対応記録の雛形をご活用ください。
告示51号以外に、電話対応で関係する法令はありますか?
電話対応の文脈では、採用活動中の求職者からの問い合わせ対応も考慮が必要な場合があります。求職者等へのセクシュアルハラスメントについては、改正男女雇用機会均等法第13条および求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止指針(告示52号)が根拠となります。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662589.pdf(2026年10月時点) https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000113(2026年10月時点) --- 本記事は一般情報の提供を目的としており、個別の法的助言・判断ではありません。具体的な対応については、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。