カスハラ 業務委託契約 労働者 該当性
カスハラ防止法の「労働者」に業務委託契約者は含まれるか
公開日 2026-10-02・更新日 2026-10-02
# カスハラ防止法の「労働者」に業務委託契約者は含まれるか
2026年10月1日、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)第33条の改正が施行され、すべての事業主にカスタマーハラスメント(カスハラ)防止措置が義務付けられました。この義務化に際して、「業務委託契約で働く人は保護対象の『労働者』に当たるのか」という疑問を持つ事業主が少なくありません。
結論から述べると、業務委託契約者が労働施策総合推進法上の「労働者」に該当するかどうかは、契約の名称ではなく、実態に基づいて判断されます。また、カスハラ防止指針(厚生労働省告示第51号)は、保護の対象を正規・非正規の雇用形態にかかわらず広く捉えており、実態として使用従属関係が認められる場合には、業務委託契約者であっても保護対象となり得ます。以下で詳しく解説します。
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労働施策総合推進法における「労働者」の定義
労働施策総合推進法第33条に基づくカスハラ防止義務の対象となる「労働者」は、同法の定義に従います。同法における「労働者」は、職業の種類を問わず、事業主に使用される者であって、賃金を支払われる者を指します。
(参照:e-Gov 労働施策総合推進法 https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132 2026年10月時点)
この定義において重要なのは、「使用される」という実態です。契約書の表題が「業務委託契約」「請負契約」「委任契約」であっても、実際の働き方が使用従属関係にある場合、労働法上の「労働者」と判断される可能性があります。
使用従属関係の判断要素
使用従属関係の有無は、一般的に以下のような要素を総合的に考慮して判断されます。ただし、これらはあくまで判断の参考となる視点であり、個別事案の最終的な判断は行政機関や司法機関が行います。
- 業務の依頼・指示に対して諾否の自由があるか
- 業務の遂行方法・時間・場所について指揮監督を受けているか
- 他者への代替・再委託が認められているか
- 報酬が時間・成果のいずれを基準としているか
- 専属性の程度(他社との取引が制限されているか)
- 機械・器具・材料などを自ら負担しているか
これらの要素のうち、指揮命令を受けて業務を行い、時間管理や場所の拘束があり、実質的に他の仕事ができない状態であれば、契約名称が業務委託であっても「労働者」と認定される可能性があります。
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カスハラ防止指針が示す保護対象の範囲
厚生労働省告示第51号(カスハラ防止指針)は、事業主が講ずべき措置の対象となる「労働者」について、正規雇用・非正規雇用を問わないことを明示しています。パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者なども含まれます。
(参照:厚生労働省告示第51号 カスハラ防止指針 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf 2026年10月時点)
指針は、雇用形態の多様化を踏まえ、実態として事業主の指揮命令下に置かれている者を広く保護の対象として捉えています。したがって、業務委託契約という形式を採っていても、実態が雇用に近い場合には、事業主はカスハラ防止措置を講じる義務を負います。
派遣労働者との比較で理解する
派遣労働者の場合、派遣先事業主も派遣労働者に対してカスハラ防止措置を講じる義務を負います。これは、派遣先が実際に指揮命令を行っているためです。業務委託契約者についても、同様の論理が適用され得ます。すなわち、委託先の個人が実態として委託元の指揮命令下で業務を行っている場合、委託元事業主はその者に対するカスハラ防止措置を講じる必要があります。
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業務委託契約者が「労働者」に該当しない場合の取扱い
実態として使用従属関係がなく、真に独立した事業者として業務を行っている業務委託契約者は、労働施策総合推進法上の「労働者」には該当しません。この場合、当該契約者はカスハラ防止義務の直接の保護対象とはなりません。
ただし、この場合であっても、事業主として取引先・委託先との関係において適切な対応を行うことは、取引上の信頼関係や企業倫理の観点から重要です。また、委託先の個人が顧客から著しい迷惑行為を受けた場合に、委託元として何ら対応しないことは、取引関係の継続に影響を与える可能性があります。
「労働者性」の判断は慎重に行う
業務委託契約者の「労働者性」の判断は、個別の事実関係に基づく複合的な評価が必要です。契約書の内容だけでなく、実際の業務遂行の実態を確認することが重要です。自社の業務委託契約者について労働者性の判断に迷う場合は、社会保険労務士や弁護士などの専門家に相談することを検討してください。
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全事業主に適用される義務であることを再確認する
カスハラ防止措置の義務は、企業規模による猶予・経過措置はなく、全事業主に適用されます。2026年10月1日の施行以降、すべての事業主は労働施策総合推進法第33条に基づく措置を講じる義務を負っています。
勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得ます(改正後第42条第2項)。また、報告義務違反(虚偽報告・報告拒否)には過料が科される場合があります。
(参照:e-Gov 労働施策総合推進法 https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132 2026年10月時点)
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事業主が取るべき実務上の対応
業務委託契約者の労働者性を踏まえた実務対応として、以下の点を確認することが重要です。
自社の業務委託契約の実態を点検する
まず、自社が締結している業務委託契約について、実態として使用従属関係が生じていないかを点検します。契約書の名称ではなく、実際の業務指示の方法、就業場所・時間の管理状況、報酬の算定方法などを確認します。
実態として労働者性が認められる場合、その者に対するカスハラ防止措置を講じる必要があります。具体的には、カスハラの定義と方針の明確化・周知、相談窓口の設置、被害を受けた際の対応手順の整備などが含まれます。
カスハラ防止措置の具体的な内容については、カスハラシールド ガイドで詳しく解説しています。初期整備を始める際の参考にしてください。
就業規則・社内規程の整備
カスハラ防止に関する方針を就業規則や社内規程に明記することが求められます。業務委託契約者が実態として労働者に該当する場合、その者も対象に含めた規程の整備を検討します。
規程の雛形については、カスハラシールド 雛形ページを参考にしてください。
相談窓口の設置と周知
カスハラ被害を受けた労働者が相談できる窓口を設置し、その存在を周知することが義務の一部です。業務委託契約者が実態として労働者に該当する場合、その者も相談窓口を利用できるようにすることが必要です。
自社の対応状況を確認したい場合は、カスハラシールド 診断ページで現状を把握することから始めることができます。
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よくある質問
業務委託契約を結んでいれば、カスハラ防止義務の対象外になりますか?
契約の名称だけで判断することはできません。実態として使用従属関係が認められる場合、業務委託契約者であっても労働施策総合推進法上の「労働者」に該当し、事業主はカスハラ防止措置を講じる義務を負います。契約書の名称ではなく、業務指示の実態・時間管理・場所の拘束・専属性などを総合的に確認することが重要です。
フリーランスとして業務委託契約を結んでいる個人は、カスハラ防止の保護を受けられますか?
実態として使用従属関係がなく、真に独立した事業者として業務を行っているフリーランスは、労働施策総合推進法上の「労働者」には該当しないため、同法に基づくカスハラ防止義務の直接の保護対象とはなりません。ただし、個別の実態によって判断が異なる場合があるため、具体的な状況については専門家への相談を検討してください。
派遣労働者と業務委託契約者では、カスハラ防止義務の扱いが異なりますか?
派遣労働者については、派遣先事業主も実際に指揮命令を行っているため、カスハラ防止措置を講じる義務を負います。業務委託契約者については、実態として使用従属関係があるかどうかによって判断が異なります。実態が派遣労働者と同様に委託元の指揮命令下にある場合、委託元事業主も措置義務を負う可能性があります。
カスハラ防止義務に違反した場合、どのような不利益がありますか?
勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得ます(改正後第42条第2項)。また、報告義務違反(虚偽報告・報告拒否)には過料が科される場合があります。措置義務の履行状況については、行政による指導・勧告の対象となります。
業務委託契約者の労働者性を自社で判断する方法はありますか?
使用従属関係の有無を判断するためには、業務指示の方法・時間管理・場所の拘束・報酬の算定方法・専属性・費用負担などを総合的に確認することが出発点となります。ただし、最終的な判断は個別の事実関係に基づく複合的な評価が必要であり、自社だけで確定的な結論を出すことは困難です。社会保険労務士や弁護士などの専門家への相談を検討してください。 --- 本記事は2026年10月時点の法令・指針に基づく一般情報であり、個別の法的助言・判断ではありません。個別事案については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。