カスハラ 対応記録 保存期間
カスハラ対応記録の保存期間・閲覧権限・廃棄の考え方
公開日 2026-09-09・更新日 2026-09-09
# カスハラ対応記録の保存期間・閲覧権限・廃棄の考え方
カスタマーハラスメント(カスハラ)の対応記録は、保存期間・閲覧権限・廃棄手順の三点を社内ルールとして整備しておくことが、2026年10月1日施行の措置義務への対応において重要な実務上の柱となります。
2026年10月1日、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)第33条(改正後)が施行され、労働者1人以上を雇用するすべての事業主にカスハラ防止のための措置義務が課されます。企業規模による猶予や経過措置はありません。対応記録の管理体制は、措置義務の履行を示す証拠にもなり得るため、早期に初期整備を始めることが求められます。
この記事では、対応記録の保存期間の考え方、閲覧権限の設定方法、廃棄の手順について、一般的な実務の観点から整理します。個別事案の法的判断や規程の添削・作成代行は本記事の範囲外です。
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対応記録を保存する法的な位置づけ
措置義務と記録の関係
厚生労働省告示第51号(カスハラ防止指針、2026年2月26日告示)は、事業主が講ずべき措置の内容として、相談体制の整備、事実確認、被害労働者へのケア、再発防止策の実施などを定めています。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf(2026年9月時点)
これらの措置を実際に行ったことを示すためには、対応の経緯を記録として残しておくことが不可欠です。記録がなければ、措置を講じたかどうかを事後的に確認する手段がなくなります。行政による報告徴収(労働施策総合推進法第42条)への対応においても、記録の存在は重要な意味を持ちます。 https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132(2026年9月時点)
なお、勧告に従わない場合は企業名公表の対象となり得る(改正後第42条第2項)ため、措置義務の履行状況を記録で示せる体制を整えておくことが実務上の備えになります。
記録に含めるべき主な内容
対応記録として残しておくことが考えられる情報は、以下のとおりです。
- 発生日時・場所・対応した担当者名
- 顧客等の言動の具体的な内容(できる限り逐語的に)
- 被害を受けた労働者の状況・訴え
- 事業主・管理職が取った対応の内容と日時
- 相談窓口への相談日時と対応内容
- 外部機関(警察・弁護士等)への相談・通報の有無と日時
- 再発防止策の内容と実施日
記録の精度が高いほど、事後の事実確認や再発防止策の検討に役立ちます。
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保存期間の考え方
法令上の明示的な定めはない
カスハラ対応記録の保存期間について、労働施策総合推進法やカスハラ防止指針(告示51号)は具体的な年数を明示していません。したがって、事業主は合理的な根拠に基づいて社内ルールとして保存期間を定める必要があります。
関連する他の法令上の保存期間を参考にする
保存期間を設定する際の参考として、関連する法令上の保存期間を確認しておくことが有用です。
労働基準法第109条は、労働者名簿・賃金台帳・雇入れ・解雇・退職に関する書類等について5年間(当面の間は3年間)の保存を義務付けています。カスハラ対応記録は同条の列挙には含まれませんが、労働者の就業環境に関わる記録として、同程度の期間を参考にする考え方があります。
また、民事上の損害賠償請求権の消滅時効は、権利を行使できることを知った時から5年(民法第166条第1項第1号)とされています。カスハラ事案が後に民事紛争に発展した場合を想定すると、少なくとも5年程度の保存期間を設定することが実務上の目安の一つとなります。
さらに、労働審判・訴訟等の手続が進行中の事案については、手続が終結するまで記録を保存し続けることが必要です。
保存期間の設定例(あくまで目安)
以下はあくまで一般的な目安であり、個別事案の性質や業種・業態によって異なります。
- 軽微な苦情・クレームとして処理した案件:事案終結後3年程度
- カスハラと判断して対応措置を講じた案件:事案終結後5年程度
- 訴訟・労働審判・警察への通報を伴う案件:手続終結後5年程度
保存期間の起算点は「事案が終結した日」とすることが一般的です。「終結」の定義(顧客等との関係が解消された日、再発がなくなった日など)を社内規程で明確にしておくと運用しやすくなります。
社内規程の雛形の参考については カスハラシールド 雛形ページ もご参照ください。
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閲覧権限の設定
なぜ閲覧権限の管理が必要か
カスハラ対応記録には、被害を受けた労働者の氏名・心身の状況、顧客等の個人情報、対応の詳細など、センシティブな情報が含まれます。これらの情報が不必要に広く共有されると、被害労働者のプライバシーが侵害されるリスクや、情報漏えいによる二次被害が生じるリスクがあります。
個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)上も、取得した個人情報は利用目的の範囲内で適切に管理することが求められます。
閲覧権限の設定の考え方
閲覧権限は「業務上の必要性」を基準に設定することが基本です。以下のような区分が考えられます。
- 全件閲覧可:カスハラ対応の統括責任者(人事部長・コンプライアンス担当役員等)
- 担当部門の案件のみ閲覧可:各部門の管理職・相談窓口担当者
- 自己が関与した案件のみ閲覧可:現場の担当者
閲覧権限は書面または電子的な方法で明確に定め、権限外の者がアクセスできない仕組みを整えることが重要です。電子ファイルで管理する場合はアクセスログを記録しておくと、不正アクセスの検知や事後確認に役立ちます。
被害労働者本人の閲覧
被害を受けた労働者本人が自己に関する記録の開示を求めた場合の対応についても、あらかじめ方針を定めておくことが望まれます。個人情報保護法上の開示請求への対応と整合させながら、社内規程に盛り込んでおくとよいでしょう。
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廃棄の手順
廃棄のタイミングと方法
保存期間が満了した記録は、適切な方法で廃棄します。廃棄の際には以下の点に注意が必要です。
- 廃棄前に、進行中の訴訟・行政手続・内部調査がないかを確認する
- 紙媒体はシュレッダー処理または専門業者による溶解処理を行う
- 電子媒体はデータの完全消去(単純削除ではなく上書き消去等)を行う
- 廃棄した記録の件名・廃棄日・廃棄方法・担当者を廃棄台帳に記録する
廃棄台帳自体は、廃棄の事実を証明するために一定期間保存しておくことが望まれます。
廃棄の承認フロー
廃棄は担当者が単独で判断するのではなく、管理職または統括責任者の承認を経て実施する仕組みにすることで、誤廃棄や不正廃棄のリスクを低減できます。
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電子管理と紙管理の留意点
電子管理の場合
電子ファイルで記録を管理する場合は、以下の点を整備しておくことが実務上の備えになります。
- ファイルへのアクセス権限をシステム上で設定する
- バックアップを定期的に取得し、保存場所を分散させる
- ファイルの作成・更新・閲覧・削除のログを自動記録する
- 保存期間満了時に廃棄対象として通知する仕組みを設ける
紙管理の場合
紙で記録を管理する場合は、以下の点に留意します。
- 施錠できるキャビネットに保管し、鍵の管理者を明確にする
- 閲覧者・閲覧日時を閲覧簿に記録する
- 持ち出しルールを定め、持ち出し記録を残す
- 保存期間満了時に廃棄対象として一覧化し、承認フローを経て廃棄する
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体制整備の全体像との関係
対応記録の管理は、カスハラ防止のための体制整備の一部です。体制整備の全体像については カスハラシールド ガイドページ で整理していますので、あわせてご確認ください。
また、自社の対応状況を確認したい場合は カスハラシールド 診断ページ もご活用いただけます。
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よくある質問
対応記録の保存期間は法律で何年と決まっていますか?
労働施策総合推進法やカスハラ防止指針(告示51号)には、対応記録の保存期間について具体的な年数の定めはありません。民事上の消滅時効(5年)や労働基準法上の書類保存期間(5年、当面の間は3年)を参考に、事案の性質に応じて社内ルールとして定めることが実務上の対応となります。
保存期間の起算点はいつにすればよいですか?
一般的には「事案が終結した日」を起算点とすることが考えられます。「終結」の定義(顧客等との関係が解消された日、再発がなくなった日など)を社内規程で明確にしておくと、運用上の混乱を防ぎやすくなります。訴訟・労働審判等が進行中の案件は、手続が終結するまで保存を継続することが必要です。
閲覧できる人を限定しないといけませんか?
法令上、閲覧権限の設定について具体的な定めはありませんが、対応記録には被害労働者の個人情報やセンシティブな情報が含まれるため、個人情報保護法の観点からも「業務上の必要性」を基準に閲覧権限を設定し、権限外の者がアクセスできない仕組みを整えることが実務上の備えとなります。
廃棄するときに注意することはありますか?
廃棄前に進行中の訴訟・行政手続・内部調査がないかを確認することが重要です。また、紙媒体はシュレッダー処理または溶解処理、電子媒体はデータの完全消去を行い、廃棄した記録の件名・廃棄日・廃棄方法・担当者を廃棄台帳に残しておくことが望まれます。廃棄は管理職または統括責任者の承認を経て実施する仕組みにすることで、誤廃棄のリスクを低減できます。
2026年10月1日の施行前に記録管理の整備を始める必要がありますか?
2026年10月1日の施行日以降、労働者1人以上を雇用するすべての事業主にカスハラ防止のための措置義務が課されます。企業規模による猶予はないため、施行日までに記録管理を含む体制の初期整備を始めることが求められます。施行後に行政による報告徴収が行われた場合、記録の存在が措置義務の履行を示す材料となり得ます。 --- 本記事は2026年9月時点の法令・告示に基づく一般情報であり、個別の法的助言・判断ではありません。個別事案への対応については、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。